ごあいさつ

日本数学会・日本応用数理学会・統計関連学会連合 異分野異業種研究交流会 委員長
小薗英雄
数学・数理科学専攻若手研究者のための異分野・異業種研究交流会(以下交流会)は, 数学専攻,数理科学専攻等の博士後期課程学生をはじめとする数学・数理科学系の若手研究者と諸科学や産業界とのマッチングの場として,産官学協働のもと2014年から開催して参りました.その間,日本数学会のひとつの委員会である社会連携協議会が,運営の主体を担ってきました.社会連携協議会は,若手数学者の育成,数学研究の交流及び数学の研究成果の普及を産官学協働のもと行うことを目的に,2015年に発足しました.日本数学会の他の委員会と異なり,同協議会は会長や顧問が産業界から選出され,日本数学会会員に加えて日本応用数理学会,統計関連学会連合の会員も委員を務めていました. 時代の変遷にともない,交流会は新たに上記の3学協会が協働で運営する「異分野異業種研究交流会」が担うこととなり,社会連携協議会は本年6月30日をもって発展的に解消されました.また交流会の事務局はこれまで九州大学マスフォアインダストリ研究所の担当でしたが,今年度から新設の東北大学数理科学共創社会センターが引き継ぐこととなりました. これまで交流会の企画・運営および実施にかかわった社会連携協議会及び州大学マスフォアインダストリ研究所の関係者の皆様へはこの場を借りて厚く御礼申し上げます この様に交流会の組織運営母体は新体制へと移行しましたが,数学・数理科学系の博士後期課程に在籍する若手研究者に,諸科学や産業への応用展開に数学の未だ見ぬ力を発見してもらうことや,産業界を含む様々な分野で活躍できる場の存在を認識してもらうことを主たる目的とするとは,これまでと同様です.また,高等学校,大学を含む教育・研究機関の教職員や企業関係者の方々にも,産業界における数学・数理科学やその知識を有する人材のニーズを把握してもらうことを役割とすることも変わりません. 2020年度から昨年度までの3回はコロナ禍のためにオンライン形式での開催を余儀なくされました. しかし,その様な中でも開催校のご尽力により,Zoom Webinar やbreak out room 等を駆使することによって,交流会を継続してまいりました.例えば 2022年度(明治大学先端数理科学インスティテュートにて開催)では登録者 202名(一般参加登録 157 名,ポスター発表 45 名),企業参加 23社という盛況振りでした.  今年度は4年ぶりに中央大学・後楽園キャンパスを会場に対面形式の開催を実現しました. 開催にあたり多大なご協力を賜った中央大学AI・データサイエンスセンターの方々には厚く御礼申し上げます.参加者の皆様におかれましは,新体制のもとでの交流会を楽しんで頂ければ幸いです.
日本数学会 理事長
鎌田 聖一
日本数学会は、2020年より日本応用数理学会と共に、さらに2021年からは統計関連学会連合も加わり、3つの学会が共同で主催する異分野・異業種研究交流会を開催してまいりました。今回もこの交流会を開催できることを心より嬉しく思います。過去の交流会では、新型コロナウイルス感染防止の観点からオンラインでの実施が続いて参りましたが、この度、ようやく対面での実施が可能となりました。数学・数理科学を専攻する若手研究者と産業界の方々が交流し、知識とアイデアを共有する貴重な場として、ぜひこの機会をご活用いただければ幸いです。 この交流会の実現には、多大なるご協力を賜りました企業・研究所、九州大学マス・フォア・インダストリ研究所、文部科学省、経済産業省、そして日本経済団体連合会の関係者の皆様に心より感謝申し上げます。また、開催校として大変ご尽力を賜りました中央大学AI・データサイエンスセンターの皆様、そして、事務局を設置していただいている東北大学数理科学共創社会センターの皆様にも、心からの御礼を申し上げます。 この交流会が皆様にとって有意義なものとなりますよう願っております。
日本応用数理学会 会長
速水 謙
日本応用数理学会は発足以来、企業と大学の研究者の交流を大切にしてまいりました。 例えば、専門分野に関する研究部会以外に、「産業における応用数理研究部会」や、「ものづくり企業に役に立つ応用数理手法の研究会」があります。 さて、私事で恐縮ですが、私自身、数理工学の修士課程を修了後、12年間企業の研究所に勤めました。そこでは数理を用いた基礎研究を楽しむとともに、企業の開発、設計の現場で「こんな数理が役に立つんだ!」という経験をしました。 皆様も本日の研究交流会で企業での数理に接するとともに、ご自分が大学で行っておられる研究を企業の立場から見つめなおして見てはいかがでしょうか? 何か新しい発想が生まれるかも知れません!
統計関連学会連合 理事長
宿久 洋
統計関連学会連合は統計学に深く関わる6学会(応用統計学会、日本計算機統計学会、日本計量生物学会、日本行動計量学会、日本統計学会、日本分類学会)が構成する組織体です。毎年1回、例年9月に共同で大会を開催し、Japanese Journal of Statistics and Data Science という学術雑誌をSpringer Natureから発行しています。 今年度は「数学・数理科学専攻若手研究者のための異分野・異業種研究交流会2023」が従前の形で開催できることを統計関連学会連合として大変喜ばしく思っています。変化の激しい世の中にあって数学・数理科学の果たす役割はより一層重要なものとなっており、中でもアカデミアとインダストリの交流の重要性は高まるばかりです。若手研究者と産業界の接点として、重要な場である本交流会に統計関連学会連合として参画させていただくことは大変光栄なことだと考えております。 数学・数理科学はややもすれば社会との距離が遠いものと思われがちです。このような交流を通して双方の理解が深まり、若い研究者の活躍の場が広がることを期待しています。

来賓挨拶

文部科学省基礎・基盤研究課長
西山 崇志
「数学・数理科学への期待と重要課題-最近の話題から-」 「数学・数理科学専攻若手研究者のための異分野・異業種研究交流会2023」の開催にあたり、一言ご挨拶申し上げます。 数学・数理科学は、学問の進展とビックデータの活用により、社会・産業・文化・自然・環境・生命などあらゆる現象の「根本原理を解明し、重要な変化の兆しを予測」できるようになることにより、より良い社会、Society 5.0実現に対して重要なイニシアティブを果たしていけると考えています。また、数学・数理科学は、これら現象の理解とこれによる新産業や社会変革を伴うイノベーションの創出が 相互に影響を及ぼし発展していくことで、学問の体系的な進展と新たな価値を創造していくことが期待されています。 本交流会は、数学専攻の博士課程学生をはじめとする若手研究者と諸科学や産業界との橋渡しを行い、産学協働のためのきっかけや基盤をつくることを目的として開催いただいていると承知しています。このような国の期待に鑑みても、本交流会は大変意義深いお取組みであると考えています。開催にご尽力いただいた多くの皆さまに敬意を表します。 本日、私からは、国の政策企画の現場から数学・数理科学に関する話題を紹介させて頂きます。本日は交流会の開催、誠におめでとうございます。

基調講演概要

福島国際研究教育機構 理事
江村 克己
<タイトル>数理科学で社会を変える
<アブストラクト>気候変動や地政学的な問題、さらには科学技術の加速度的な進展により、世の中の不確実性が高まっています。このような環境でより良い社会をつくっていくためには、データを活用し、社会全体を最適化することが必要になります。数理科学には事象をメタ化・定式化する力があります。これを活かして社会事象の理解、さらには全体最適による新しい社会価値創造に貢献していくことが期待されます。  本講演では、上記の背景に加え、社会全体を最適化する上で数理科学が果たすべき役割について述べます。数学・数理を活かし新しい価値を創造していくためには、数学者、数理科学者がこれまで以上に社会との接点を持つことが必要になります。数学・数理科学で社会を変えることにチャレンジする人材が増えることを大いに期待しています。そのチャレンジにあたり、磨くべき素養、意識して取り組むべきことについてもお話しますので、今後のキャリアを考える一助としていただければと思います。