論文賞 1996年度

(著者の所属は論文発表時のもの)

論文賞
理論部門

[論文]

Durand-Kerner型補助関数を用いた非線形方程式の多段反復解法 (日本応用数理学会論文誌 Vol.4,No.2,1994,pp.67-80)

[著者]

櫻井 鉄也(筑波大学), 杉浦 洋(名古屋大学),鳥居 達生(名古屋大学)

[受賞理由]

本論文では,関数f(z)の複数の零点を同時に求めるための様々な反復法が,適当な補助関数g(z)を用いたf(z)/g(z)の有理関数近似を考えることによって統一的に導けることを指摘し,特に補助関数としてDurand-Kerner型のものを用いる新しい同時反復解法を提案している. そしてこの方法の収束次数を理論的に評価するとともに,数値例によってもその有効性を確認している. ここで提案された方法が,f(z)の数値のみを用い導関数は必要としないため適用範囲の広いものであること,論文がわかりやすく書かれていることが高く評価された.

応用部門

[論文]

代用電荷法による放射スリット領域への数値等角写像の方法 (日本応用数理学会論文誌 Vol.5,No.3,1995,pp.267-280)

[著者]

天野 要(愛媛大学)

[受賞理由]

本論文では,平面上のいくつかのJordan閉曲線の外側の多重連結領域を,放射状にスリットの配置された領域へ等角に写像する関数を数値的に求める方法を提案し,その有用性を数値実験によっても確認している. この方法は代用電荷法に基づくもので,簡明でかつ精度がよい. この提案が,放射スリット領域への近似等角写像の効率のよい構成法を内外を通して初めて与えたものであること,および湧出点または吸込点と障害物を伴う2次元ポテンシャル流の解析等への応用をもつ重要なものであることが高く評価された.

実用部門

[論文]

分布関数の再帰方程式による確率論的破壊力学の解法の提案 (日本応用数理学会論文誌 Vol.5,No.4,1995,pp.445-461)

[著者]

秋葉 博(株式会社アライドエンジニアリング),吉村 忍(東京大学),矢川 元基(東京大学)

[受賞理由]

本論文は,プラント機器の疲労によるき裂の進展過程を表わす再帰方程式を導き,それに基づいて,プラント機器の寿命を評価するための効率のよい計算法を提案したものである. この方法では,初期き裂は確率的に発生するが,その後のき裂の成長は決定論的に進行するものとみなすことによって,寿命評価の高速化をはかっている. この方法は,従来のモンテカルロ法によるものと比較して,計算時間を数十分の一に短縮する効果があり,実用上の貢献が非常に大きいと評価された.