第1回業績賞 (2011年度)

分類A.理論を重点とするもの: 1

[受賞者]

大石 進一(早稲田大学), 荻田 武史(東京女子大学)

[項目]

「実用的な精度保証付き数値計算法の確立 」

[業績概要]

受賞者らは、IEEE 754が定める丸めモードの制御を利用した革新的な数値計算方式を確立し、線形系の問題に対する数値解の精度保証を、近似解を得るのと同程度から数倍程度の時間で達成させ、精度保証付き数値計算の実用性を示した。また、浮動小数点演算における誤差の情報を保存しながら数値計算を行うエラーフリー変換法を確立し、ベクトルの総和や内積の高精度計算法を開発した。さらに、この高精度計算法に基づき、問題の悪条件性に合わせて必要なだけ演算精度を増加させ、所望の精度を持つ数値解を得ることが可能な適応的な数値計算アルゴリズムのフレームワークを構築した。これは、連立一次方程式に対して必要な精度を持つ解を得る適応的数値計算法から工学アルゴリズムのエラーフリー化まで様々な応用がある。

分類B. 応用を重点とするもの: 2

[受賞者]

青木尊之(東京工業大学)

[項目]

「数値流体力学におけるマルチモーメント法を用いた高精度計算手法の開発および GPU のハイパフォーマンスコンピューティングへの応用」

[業績概要]

数値流体力学における新しい高精度計算手法として、従属変数にセルや格子点上の値だけでなく勾配や区間積分値等のマルチモーメントを用いた補間関数に基づく局所補間微分オペレータ (IDO) 法を開発した。また、GPUを用いた大規模な計算を行い、気象庁の次期気象予報コードに新しい計算アルゴリズムの導入することで完全GPU化し、CPU計算に比べて数10倍の高速化を果たした。2011年には、フェースフィールド法による合金の樹枝状凝固成長をGPUでシミュレーションし、スパコンTSUBAME 2.0の4000GPUを用いて2.0 PFLOPSの実行性能を達成した。

[受賞者]

今村俊幸(電気通信大学)、山田進(日本原子力研究開発機構)、町田昌彦(日本原子力研究開発機構)

[項目]

「超並列計算機利用技術の開発と量子固有値問題への応用」

[業績概要]

受賞者らは、地球シミュレータやその他超並列計算機資源を有効に使うための通信技術やチューニング技術を開発し、その開発技術を量子固有値問題へと応用することで、最先端の計算機の性能を極限まで追求した。また、それらの技術を基に、密行列用固有値対角化ライブラリーEigen-Kを開発した他、「京」の先端的ユーザにその利用技術を積極的に公開・提供している。更に、計算科学技術の研究開発だけでなく、固体物理学で普及している密度行列繰り込み群法コードの超並列化版を世界で初めて開発し、固体物理学および原子物理学において複数の知見を得ている。