研究部会連合発表会優秀講演賞(2023年)

受賞者 受賞講演について
尾崎 克久
(おざき かつひさ)
(芝浦⼯業⼤学)

[講演題目]

正規化されていない疑似⾼精度計算の設計と精度維持のための⼿法について

[講演概要]

数値計算は有限桁のフォーマットを使⽤するため,丸め誤差の問題を抱えており,いかに⾼速かつ⾼信頼性の計算結果を数値計算で得るかについては,現在も活発に議論が続いている.なかでも従来の浮動⼩数点数を⽤いた⾼精度化を⽬指す研究は特に重要である.本研究発表の成果は,浮動⼩数点数の和を⽤いた⾼精度計算⽅法である複数の⼿法を援⽤することで,新たに⾼速かつ⾼精度な演算体系を確⽴した点にある.さらに,微⼩な計算コスト増で精度劣化を防ぐことに成功している.講演資料では,意義が明確に提⽰され、従来⼿法との違いがわかりやすくなるよう⼯夫が施されていた.

浜⼝ 広樹
(はまぐち ひろき)
(東京⼤学)

[講演題目]

点配置同定問題における解の⼀意性

[講演概要]

本講演では,低階数テンソル補完などの,⽋損データ同定法の理論解析において重要な未解決問題であった,テンソルの⼀意復元を保証するためのランダムサンプル数の解明を扱っている.⼀意復元保証のためのサンプル数は,テンソル補完⼿法の精度を表す最も重要な指標であるが,既知研究ではその漸近評価の上下界に⼤きな隔たりがあり,⼀意復元を保証するための最⼩ランダムサンプル数は未知であった.今回の講演では,漸近的に既存下界に⼀致する上界が与えられ,本問題の解決が報告されている.特に,点配置同定問題と呼ばれるより抽象度の⾼い枠組みを導⼊することによって,テンソル補完⼀意性が,特定のアルゴリズムに依存しないハイパーグラフの⼀性質として理解可能であることが⽰され,既存研究に⽋けていた離散幾何・組合せ論的の視点の導⼊に成功している.

森⼭空良
(もりやま そら)
(東京⼤学)

[講演題目]

ミウラ折りの応⽤による空間曲線近似と構造特性解析

[講演概要]

建築分野において,曲⾯構造を成り⽴たせるための曲線の梁材をいかに構成するかは,重要な課題である.本講演では,折紙のパターンにズレを導⼊すると折り畳んだ時にまっすぐにはならず曲がるという現象に着⽬し,帯状シート材から⾃由な空間曲線状の梁材を製造するための⼿法を提案した.提案⼿法では,幅⼀定の帯状のシートから 100%の材料効率で製造できるという利点が挙げられる.また,ロール材が⽤いることができることから,今後,折るプロセスの⾃動化(⾃⼰折り技術やロボット加⼯など)の開発によって,産業応⽤への展望も期待される.発表においては,原理や設計論が視覚的・触覚的に理解できるように,わかりやすい図を作図しており,⽴体モデルを制作し回覧する等プレゼン上の⼯夫も丹念であった.