第6回 若手優秀講演賞 (2009年度)

受賞者 受賞講演について
伊藤 弘道
(群馬大学大学院工学研究科)

[講演題目]

線形弾性体における多角形空洞の一組の観測データによる再構成について

[講演概要]

共同研究者である池畠(群馬大・工)氏が創案した「囲い込み法」を用い, 非破壊検査に関わる逆問題を考察した. その結果,2次元線形弾性体に含まれる未知の多角形空洞の凸包を,物体境界の一組のデータ(物体にかける表面力とその応答:変位)から,そのデータや未知の多角形空洞に何ら制約条件を課さずに再構成する公式を確立した. その際,肝要な多角形頂点近傍での対応する順問題(境界値問題)の解の収束級数展開も導出した.

斉藤 一哉
(東京工業大学大学院理工学研究科)

[講演題目]

平面/空間充填形に基づく軽量コアパネルの剛性,強度特性

[講演概要]

周期的に正4面体型の凹部を導入した平板を2枚対向させ貼り合わせることで,Octet-Truss形状の極めて安定なコアパネルが製作される. 本講演ではダイアコアと名付けたこれらのパネルに関して,パネル表面の平面充填形(タイリング,テセレーション)を変換することによって多数の発展型のモデルを創製すると共に,有限要素法によって代表的な機械的特性である曲げ剛性,強度を明らかにした.

鈴木 正則
(東京理科大学大学院工学研究科)

[講演題目]

時間差を考慮に入れた時間-周波数領域でのブラインド信号源分離と位置の特定に関する研究 -2つの信号源への適応-

[講演概要]

信号源から観測点までの時間差を考慮に入れたブラインド信号源分離と信号源位置を特定する手法を提案し,数値実験による手法の妥当性の検討を行った. 本手法は従来,必要とされた時間-周波数領域における独立性の仮定を必要としないブラインド信号源分離であり,本手法により,ノイズ性音源に埋もれた信号源への適用が可能となった.

高山 彰優
(山形大学工学部)

[講演題目]

高温超伝導薄膜内の遮蔽電流密度解析III -永久磁石法によるjC分布の決定-

[講演概要]

高温超伝導体(HTS)薄膜の臨界電流密度を非接触で測定する永久磁石法を数値的に再現した. この目的のため,HTSを流れる遮蔽電流密度の時間発展問題を解く非軸対称FEMコードが開発された. 同コードを用いて永久磁石法を再現した結果,磁石がHTSの境界近傍にある場合でも最大反発力が臨界電流密度に比例することがわかった. この結果は比例係数を予め求めておけば,臨界電流密度の分布が決定できることを意味している.

二村 保徳
(筑波大学大学院システム情報工学研究科)

[講演題目]

バンド局所化による電子状態計算の高性能並列アルゴリズム

[講演概要]

第一原理電子状態計算では大規模固有値問題が現れる. 従来用いられている固有値解法では全占有バンドでの直交化と部分空間対角化を行うが,これらの計算量が対象とする系の原子数の三乗に比例する上に効率的な並列化が困難なため,大規模計算におけるボトルネックとなっていた. 本講演では占有バンドを複数の領域に分け,それぞれを周回積分により局所化し,独立に解くことでスケーラブルな並列計算を実現することを提案した.

山田 崇恭
(京都大学大学院工学研究科)

[講演題目]

固有値問題におけるレベルセット法による形状表現を用いたトポロジー最適化

[講演概要]

レベルセット法による形状表現とチコノフの正則化を用いたトポロジー最適化を定式化し,固有値最大化問題と,固有値規定問題へ展開した. そして,トポロジー最適化問題を,反応拡散方程式を解く問題に帰着させ,明確な外形形状表現を行いながら,構造の形状と形態の変更を可能とし,かつ数値計算上安定的に設計変数を更新可能な方法論を提案した. さらに,数値解析例により方法論の有効性と妥当性を示した.