第11回 若手優秀講演賞 (2014年度)

受賞者 受賞講演について
伊藤 伸志
(いとう しんじ)
(東京大学大学院情報理工学系研究科数理情報学専攻)

[講演題目]

ルンゲ現象を利用した有理型関数の極推定法

[講演概要]

本研究では、有理型関数の極を複素平面上の開曲線上の関数値から求める問題を扱った。この問題は点ソース推定逆問題などに広く応用でき、工学的に重要である。問題の解法を考える上でルンゲ現象とよばれる現象に着目した。ルンゲ現象は関数を高次の補間多項式で近似するとき誤差が大きくなる現象で、その原因は関数の極に関係する。本講演ではルンゲ現象を逆に利用することで問題の解法を構成し、その解析結果と数値実験結果を示した。

上岡 修平
(かみおか しゅうへい)
(京都大学大学院情報学研究科)

[講演題目]

離散二次元戸田分子と格子路の組合せ論

[講演概要]

可積分系の持つ組合せ構造は様々な観点から議論されてきた。可積分系を数学や工学の他分野に応用する際、厳密解等の可積分系の数理構造を、その分野の視点から新たに見つめ直す必要がある。本講演では、可積分系の一つである離散二次元戸田分子に着目し、その初期値問題の解が、非交叉格子路の重み和の形で一般に記述可能であることを示した。一例として代数的組合せ論に現れるシンプレクティック盤との関係も明らかにした。

佐藤 峻
(さとう しゅん)
(東京大学 大学院情報理工学系研究科 数理情報学専攻)

[講演題目]

混合多項式行列における小行列式最大次数列に対する組合せ緩和法

[講演概要]

組合せ緩和法は、行列の組合せ的構造に着目する構造的(グラフ論的)アプローチの高速性と、数値情報を利用するアプローチの正確性の両方を兼ね備えている。 この枠組みは、指定されたkと混合多項式行列A(x)に対してk次小行列式最大次数を求める問題に適用できることが知られている。本発表では、すべてのkに対する最大次数を同時に求める必要がある場合に、付値双マトロイドの離散凹性を利用して、効率的なアルゴリズムを提案した。

中務 佑治
(なかつかさ ゆうじ)
(東京大学大学院情報理工学系研究科数理情報学)

[講演題目]

コンパニオン型行列固有値による有理関数の根計算

[講演概要]

多項式の根はCompanion型行列の固有値と一致することが知られている。有理関数の根は商で与えられる場合以外(例えば部分分数や連分 数表現)は自明でない。本講演では、Companion型行列を多項式基底でのx乗算と理解することで適用範囲を拡張し、有理関数の根計算を多項式に帰着せずに直接行列固有値から得る方法を提案した。行列要素は有理関数の係数から直接構成でき、多項式帰着する方法に比べ数値安定性も大幅に改善される。

宮武 勇登
(みやたけ ゆうと)
(東京大学大学院情報理工学系研究科数理情報学専攻)

[講演題目]

ハミルトン系に対する並列的なエネルギー保存解法

[講演概要]

微分方程式に対して、何らかの良い性質や構造を離散化後も再現する構造保存解法を用いると、定性的に正しい数値解が得られることが多い。構造保存解法の一種として、近年、ハミルトン系に対するエネルギー保存解法の研究が発展してきているが、既存研究では、精度と計算コストの間に大きなトレードオフがあった。本講演では、並列計算を利用して、2次精度公式と同程度のコストで計算可能な高精度エネルギー保存公式の導出法を示した。