第13回 若手優秀講演賞 (2016年度)

受賞者 受賞講演について
縣 亮一郎
(あがた りょういちろう)
(海洋研究開発機構・地震津波海域観測研究開発センター・ 地震津波予測研究グループ)

[講演題目]

粘弾性変形の大規模有限要素解析を用いた地殻構造最適化手法の開発

[講演概要]

海溝型巨大地震発生後の数年間における地殻変動は、一般的に粘弾性体における準静的な変形として計算される。本研究ではまず、地震後地殻変動の高分解能計算を可能にする、粘弾性変形の大規模有限要素解析手法を開発した。次にこの解析手法とアジョイントベースの最適化を組み合わせて地殻変動観測データからの地中粘性パラメータ推定を行う手法を開発し、地殻構造モデルを高度化していくための検討を行った。

奥村 伸也
(おくむら しんや)
(公益財団法人九州先端科学技術研究所)

[講演題目]

円分体に対するイデアル格子上の短い生成元の復元可能性について

[講演概要]

円分体上のイデアル格子は、耐量子性に加えて完全準同型性または多重線形性を持つ高機能暗号の構成に利用されてきた。それらの重要な暗号の中には、単項イデアル問題と短い生成元の復元問題を解くことにより秘密鍵を復元できるものが存在する。本研究では、暗号応用上重要な同種が2冪の 円分体上の短い生成元の復元問題に関して、既に知られている攻撃の適用範囲の拡張法とその攻撃の防御法を提案した。

白髪 丈晴
(しらが たけはる)
(九州大学大学院システム情報科学府)

[講演題目]

一般の遷移確率に対する決定性ランダムウォークの全訪問時間

[講演概要]

近年、ランダムウォークの決定的模倣である決定性ランダムウォーク(deterministic random walk)について、ネットワークの探索や物理現象のシミュレーションなど複数の文脈で研究が為されている。本講演では既存研究では未解決であった一般の遷移確率に対応する決定性ランダムウォークの全訪問時間の上界を導出した。この上界は並列探索の高速化に関する従来結果を改善し、決定性過程により確率過程と遜色ない高速化が実現出来る例を示している。

保國 惠一
(もりくに けいいち)
(筑波大学 システム情報系 情報工学域)

[講演題目]

長方行列束の固有値問題に対する周回積分型解法

[講演概要]

複素平面上の指定領域内部における、長方行列束の固有値を計算するための周回積分型解法を提案した。このような一般化固有値問題は、制御論やゲーム論において現れる。正方行列束向けである従来の周回積分型解法を長方行列束向けに拡張し、適当な仮定の下で提案法が所望の固有対を与えることを示した。人工的な大規模問題及び特異な問題に対する数値実験結果により、提案法の有効性を示した。