第14回 若手優秀講演賞 (2017年度)

受賞者 受賞講演について
神吉 雅崇
(かんき まさたか)
(関西大学システム理工学部数学科)

[講演題目]

疑似可積分性をもつ離散方程式

[講演概要]

離散力学系の可積分性判定基準として特異点閉じ込めテストと代数的エントロピーテストの2種類が有力である。本講演ではこの2つの判定基準が互いに矛盾する力学系として、2次元離散戸田格子方程式の拡張および、Heideman-Hogan系の線形化可能拡張系を紹介した。両者はともに可積分系と非可積分系の両方の性質を持っている新しいタイプの離散方程式であり、可積分性の精密な分析に役立つサンプルであると期待される。

國谷 紀良
(くにや としかず)
(神戸大学大学院システム情報学研究科)

[講演題目]

年齢構造化感染症モデルに対する基本再生産数Roの数値近似

[講演概要]

感染症の流行の脅威を定量化する指標である基本再生産数Roは,次世代作用素と呼ばれるある線形作用素のスペクトル半径で定義される.年齢構造化感染症モデルは,個人の年齢が流行動態に及ぼす影響を考慮できる意味で現実的であるが,無限次元系であるためRoの計算は一般に困難であった.本研究ではそのようなRoを,年齢変数に関する半離散化系を用いて計算する手法を提案し,その正当性をスペクトル近似理論により証明した.

松江 要
(まつえ かなめ)
(九州大学 マス・フォア・インダストリ研究所 / カーボンニュートラル・エネルギー国際研究所)

[講演題目]

有限進行波の精度保証付き数値計算

[講演概要]

偏微分方程式の進行波解で、有限時刻で一定値を達成するものの精度保証付き数値計算法を構成しました。退化微分方程式の特異性を解消する変数変換、不変集合間の接続軌道の計算、安定多様体上のリャプノフ関数の構成により、一定値を取るまでの時刻を含めた具体的プロファイルを精度保証計算できます。また、同手法は爆発解も含む有限時間特異性計算の共通メカニズムを見出しています。

吉岡 秀和
(よしおか ひでかず)
(島根大学生物資源科学部)

[講演題目]

河床付着藻類の繁茂抑制に関する変分不等式の具体的な厳密解と漸近解析

[講演概要]

ダム下流では流量減少による河床付着藻類の繁茂が深刻化しており,その抑制手法の確立が急務である.本講演では,特異確率制御理論と付着藻類の個体群動態モデルに依拠して,ダムからの放流指針をモデリングする.とくに,効果的な繁茂抑制を実現する最適放流指針の導出が退化楕円型変分不等式の求解に帰着されることを示し,その厳密解や漸近解を通して,繁茂抑制に対する姿勢が導く最適放流指針と個体群の振る舞いを検討する.