第18回 若手優秀講演賞 (2021年度)

受賞者 受賞講演について
池 祐一
(いけ ゆういち)
(東京大学大学院情報理工学系研究科附属情報理工学教育研究センター)

[講演題目]

TDA的損失関数の確率的劣勾配法に関する収束定理

[講演概要]

TDAはデータのトポロジーを取り出す手法であり,近年は機械学習との組合せが研究されている.そこではデータのトポロジー情報を集約したパーシステンス図の関数を確率的勾配降下法により最適化するアプローチが取られることが多い.しかし,このようなTDA的損失関数に関する一般的な収束定理はこれまで知られていなかった.本研究は,マイルドな条件下でTDA的損失関数が確率的劣勾配降下法により収束することを示した.

井上 広明
(いのうえ ひろあき)
(神戸大学大学院工学研究科電気電子工学専攻)

[講演題目]

データ駆動型アプローチによる神経ネットワークのダイナミクス推定

[講演概要]

本研究では,神経ネットワークの潜在ダイナミクス推定のためのデータ駆動型手法 を提案した.提案法では,イメージング計測の順過程を状態空間モデルとして定式化し,機械学習と統計物理学の手法を融合したレプリカ交換粒子ギブスサンプリング法を構成し,大域的探索と局所的探索の同時実現により,イメージングデータのみから神経ネットワークの潜在ダイナミクスを逆推定する.さらに,検証実験を行い,提案法の有効性を示した.

岩政 勇仁
(いわまさ ゆに)
(京都大学大学院情報学研究科)

[講演題目]

2×2型分割多項式行列の行列式次数を求める組合せ的多項式時間アルゴリズム

[講演概要]

多項式行列の行列式次数を求める問題は,重み付きマッチング問題の代数的な一般化となっている.例えば,最大重み完全2部マッチング問題は,2部グラフの構造と枝重みを2種類の変数を用いて表現した多項式行列の行列式次数を求める問題として定式化できる.本研究では,先の定式化の拡張である2×2型分割多項式行列の行列式次数を求める問題に対して,組合せ的で高速な強多項式時間アルゴリズムを構築した.

牛山 寛生
(うしやま かんせい)
(東京大学大学院情報理工学系研究科)

[講演題目]

最適化に現れる常微分方程式の本質的な収束レート

[講演概要]

連続最適化手法を常微分方程式(ODE)の離散化と結びつける研究が近年広がりを見せている.この視点により最適化手法の収束レートはODEの収束レートを通して解釈できるが,一方でODEの収束レートは時間リスケーリングでいかようにも変更できてしまうという問題がある.本発表では,数値的安定性から離散化時のステップ幅に制約がかかることに着目し,ODEに対しリスケーリングによらない「本質的な収束レート」が定められることを示した.

剱持 智哉
(けんもち ともや)
(名古屋大学大学院工学研究科)

[講演題目]

不連続Galerkin時間離散化手法による離散勾配法の高精度化

[講演概要]

離散勾配法とは,エネルギー構造(保存・散逸)を持つ時間発展方程式に対する,それらの構造を再現する時間離散化法である.その精度は時間刻み幅に対して高々2次であり,高精度化の研究がこれまでになされてきた.本研究では,新たな高精度化の方法として,不連続Galerkin法による時間離散化手法を用いた手法を提案し,本手法が幅広い方程式に適用可能であることを示した.また,数値例により手法の有効性を示した.

佐藤 寛之
(さとう ひろゆき)
(京都大学大学院情報学研究科数理工学専攻)

[講演題目]

リーマン多様体上の非線形共役勾配法の新たな枠組みと数値線形代数への応用

[講演概要]

ユークリッド空間上の無制約最適化アルゴリズムとして盛んに研究されている非線形共役勾配法は,リーマン多様体上の最適化問題に対する求解アルゴリズムに拡張することができる.本研究では,リーマン多様体上の非線形共役勾配法の新しい一般的な枠組みを提案し,複数の具体的なアルゴリズムの収束性解析を行った.また,行列の特異値分解および低ランク行列補完問題への応用を通して,数値実験により提案手法の有効性を検証した.

重富 尚太
(しげとみ しょうた)
(九州大学大学院数理学府)

[講演題目]

捩率一定空間曲線およびtorsion angle一定空間離散曲線に対する楕円テータ函数による明示公式

[講演概要]

本研究では,捩率角一定空間離散曲線と捩率一定空間曲線の明示公式を,楕円テータ函数を用いて2種類ずつ構成した.また,曲線が閉じる条件を明示的に求めることにも成功した.この結果に対して適切に時間発展を導入することにより,Kaleidocycle と呼ばれる,様々な特異的性質を持つ閉リンク機構の運動を記述する明示公式の構成が可能である.

園田 翔
(そのだ しょう)
(理化学研究所革新知能統合研究センター)

[講演題目]

積分表現ニューラルネットが定める積分方程式の一般解

[講演概要]

深層学習が汎化するメカニズムを解明するうえで,深層学習を通じて得られる典型的な解の特徴付けが問題となる.本講演では,その基礎付けとして,隠れ1層のニューラルネットの学習問題に対応する積分方程式を考え,Fourier表示を用いてその一般解を与える方法を説明し,深層学習を通じて典型解の考察を与えた.

水口 信
(みずぐち まこと)
(中央大学理工学部情報工学科)

[講演題目]

楕円型方程式と放物型方程式に対する半離散ガレルキン近似の誤差定数について

[講演概要]

線形熱方程式の半離散近似の誤差定数値について考える. 半離散近似の誤差定数値は楕円型方程式のリッツ射影の誤差定数の2倍以上で評価される結果が得られている.我々は主に精度保証付き数値計算に対する応用という観点から半離散近似の誤差定数値に対するよりシャープな評価法を提案した. そして半離散近似の誤差定数値はリッツ射影の誤差定数値と一致するというほぼ最良の結果が得られた.