第19回 若手優秀講演賞 (2022年度)

受賞者 受賞講演について
今⽥ 凜輝
(いまだ りんき)
(東京大学大学院総合文化研究科)

[講演題目]

折紙/切紙テッセレーションに現れるソリトンと力学系による解析

[講演概要]

パターンが繰り返し対称性を持つ折紙/切紙において各繰り返し単位が異なる変形を辿る非一様な変形は工学応用で活用されてきた一様な変形では生じ得ない非線形現象の源泉である.本講演では折紙/切紙における局在した変形が伝播するソリトン的挙動の存在を報告した.また繰り返し単位間の連動関係を表す離散力学系を導出・解析することで折紙/切紙におけるソリトンが各々異なる数理構造に起因することを示した.

兼子 晃寛
(かねこ あきひろ)
(大阪大学大学院基礎工学研究科)

[講演題目]

連続時間 Markov 連鎖後退確率微分方程式に関するマルチステージ Euler-丸山型解法について

[講演概要]

ブラウン運動で駆動されるマルコフ型後退確率微分方程式に対し,解を記述する偏微分方程式を空間離散化し常微分方程式へ近似することは,確率論的にはマルコフ連鎖で駆動される後退確率微分方程式(MC-BSDE)への近似と等価である.本研究では,MC-BSDEのオイラー丸山近似相当物として,空間離散化由来の硬い方程式の取り扱いに長けたExponential Integratorを用いる解法を提案した.

佐藤 良亮
(さとう りょうすけ)
(東京大学大学院情報理工学系研究科数理情報学専攻)

[講演題目]

On Efficiency of Polyhedral Clinching Auctions

[講演概要]

双方向市場のオークションでは,買い手と売り手が戦略的に行動するため,誘因両立性・個人合理性・収支均衡を全て満たす効率的なメカニズムは存在しない.そのため,主催者の利用可能な情報に仮定を置いたうえで,最善のメカニズムが追究されている.本研究では,さらに買い手の予算制約を扱い,比較的弱い仮定である単一サンプルの仮定のもとで上述の性質を全て満たすメカニズムを初めて提案し,その効率性を評価した.

寺尾 剛史
(てらお たけし)
(理化学研究所計算科学研究センター)

[講演題目]

固有値分解に対する2 ステップ型反復改良法

[講演概要]

反復改良法は,ある必要な精度を満たす近似解を初期値とした反復解法の一つである.通常の計算では,近似解の修正項を高精度演算によって計算する.本講演で提案した2ステップ型反復改良法とは,修正項に対して,さらに修正項を計算する.その際に,2ステップ目の計算では,精度を落とすことが可能であることを示した.これにより,提案手法は従来の固有値反復改良法と比較して,最大で約2倍の計算性能を達成した.

⻄⽥ 優樹
(にしだ ゆうき)
(東京理科大学工学部情報工学科)

[講演題目]

優対角なmin-plus行列の上三角化とその交通流モデルへの応用

[講演概要]

Min-plus正方行列は一般には固有値を1つしか持たない一方で,その固有多項式は行列の次元と同数の根を持つ.これらの固有値ではない根に対しても,固有ベクトルと類似の性質をもつベクトルを定義できる.本研究では行列が優対角である場合に,固有ベクトルの類似物を用いて行列を上三角化できることを示した.さらに行列が優対角であるという仮定を少し弱めた結果を導き,そのタイプの行列が現れる交通流問題へ適用した.