セミナー

東大数値解析セミナー (UTNAS) 第138回

投稿者
齊藤 宣一 (東京大学大学院数理科学研究科)
関連性
一般
日程
2023年10月17日(火)16:30-18:00
概要
奥村 真善美(甲南大学知能情報学部)先生のご講演です
東京大学大学院数理科学研究科と情報理工学系研究科では,本年度も
数値解析セミナーを定期的(月に1,2回程度)に開催致します.
多くの皆様のご参加をお待ち申し上げます.

講演者
奥村 真善美(甲南大学知能情報学部)

題目
空間2次元における動的境界条件下のCahn-Hilliard方程式に対する構造保存スキームについて

概要
偏微分方程式の初期値境界値問題において, 動的境界条件を課した
問題が幅広く研究されている. この境界条件は, 領域内部と境界の
相互作用を表現するために導入された条件であり, 条件内に未知関
数の時間微分を含む. それゆえ, 代表的な境界条件と異なり, 動境
界条件は, 領域内部の力学系と同時に境界上でも同種, あるいは異
種の力学系を考察することができ, その境界値問題は領域内部の方
程式と境界上の方程式の連立系と見なすこともできる. 
近年, 相分離現象を記述するCahn-Hilliard方程式に対し, 境界上
でもCahn-Hilliard方程式を考察する動的境界条件を課したモデル
がGoldstein-Miranville-Schimperna (GMS)やLiu-Wu (LW)によ
って提唱された. 
両者は化学ポテンシャルの外向き単位法線方向微分の扱いが異なっ
ており, GMSモデルでは領域内部と境界の質量和が保存するという
保存則, LWモデルでは内部と境界それぞれで質量が保存するという
保存則が成り立つ. さらにはいずれのモデルにおいても領域内部と
境界のエネルギーの総和が減衰するという総エネルギー散逸則が成
り立つことにも注意したい. これらの性質は数値計算においても重
要な意味を持ち, その構造をスキームが離散的に再現することで,
安定な計算が可能になるなどの様々な恩恵がある. 
本研究では, 先行研究を踏まえ, これらの性質を離散的に再現する
構造保存スキームを構成した. 本講演では, それらの構造保存スキ
ームを紹介するとともに, GMSモデル対する構造保存スキームに焦
点を当て, その可解性について得られた結果を報告する. また, 両
モデルの保存則の違いに起因する, 数値解の挙動の違いも興味深く,
その数値計算例も紹介する.
本研究は深尾武史氏(龍谷大学)との共同研究に基づく.

場所

東京大学大学院数理科学研究科 002室及びオンライン

お問い合わせ先

氏名:齊藤 宣一(東京大学大学院数理科学研究科)
Eメール:norikazu__AT__g.ecc.u-tokyo.ac.jp

詳細web

https://sites.google.com/g.ecc.u-tokyo.ac.jp/utnas-bulletin-board/