研究部会だより

応用数理ものづくり研究会の活動内容の紹介

2021年07月22日

岡澤 健介, 高田 章, 櫻井 鉄也, 井手 貴範

おかざわ けんすけ, たかだ あきら, さくらい てつや, いで たかのり

日鉄ソリューションズ(株), ロンドン大学, 筑波大学, 株式会社アイシン

本研究会は企業におけるデータ解析へのニーズが高まりつつあった2014年8月に活動をスタートしました。参加企業を対象として「第3の科学」と呼ばれる計算機シミュレーション、「第4の科学」と呼ばれるデータ科学、などの計算機科学分野を中心に、広く学び、また、情報交換する場を提供してまいりました。コロナ禍の現在において、今もなお、この活動は精力的に行われ、進行中です。現在の参加企業数は計16社(内、賛助会員企業数9社)になります。

主な活動は、隔月に実施する技術セミナー、年に1~2回のペースで実施する懇談会、不定期に行う関連施設の見学会です。

技術セミナーは2~3名の講師をお招きし、各1時間の講演を行います。講師は大学、研究機関、企業においてシミュレーションやデータ解析分野等でご活躍されている方々です。話題はプロセスデータ分析やマルチフィジックススシミュレーションなど、企業での技術開発に直結する内容から解析対象が人体や社会現象といった企業研究のヒントとなる内容など、幅広い講演会となっています。また、量子コンピュータやコロナ対策など、そのときどきで話題になった内容に特化し、特集を組むこともあり、最新の内容も取り上げています。

この4月で本技術セミナーは37回目の実施となりました。ご参考までに直近3回の講演の題名を以下に列挙します。

 

第35回技術セミナー(開催日時 令和2年12月8日13:30~17:10)

「単一移動点波源の代数的直接的同定法」

「統計的因果推論、構造から見るか?差分から見るか?:非巡回有向グラフ(DAG)、潜在反応モデル、そして関数的(構造的)因果モデルによる両者の統合的理解」

「感染症流行の数理モデルを活用した解析から得られた新型コロナウイルスに関する知見」

第36回技術セミナー(開催日時 令和3年2月25日13:30~17:10)

「データを活用した高機能材料の研究・開発・評価・製造の支援」

「社会インフラ製品における設計開発技術の取組みについて」

「社会問題解決に向けた数理:空き家と数学、そして〇〇」

第37回技術セミナー(開催日時 令和3年4月6日13:30~17:10)

「スーパーコンピュータ『富岳』性能世界一 4 冠までの開発の道のりと今後の展開に ついて 」
「Society5.0 を支える人・社会とシステム・サービスの不確かさを含めたモデリング・ シミュレーション 」

「地域における新型コロナウイルス感染予防策の効果予測について 」

 

懇談会は、4~5名のグループに分かれ、共通の話題について話し合う場です。ここで、ご参加された方々がまず感じることは、各企業が意外にも同じ悩み、似た課題を抱えているということです。そして、守秘基準に抵触しない範囲内ではありますが,情報交換をすることは非常に貴重な経験となります。同時に、人脈も広がることになります。しかし、新型コロナウイルス感染症の感染拡大の影響で懇談会を1年以上実施していません。現在、コロナ禍だからこそ可能になるオンラインを有効活用した懇談会を目指し、実施検討中です。

見学会はこれまでに4回実施しています。見学した場所は統計数理研究所、八幡製鉄所、花王すみだ事務所(花王ミュージアム)、産総研柏センター(ABCI計算機センター)です。大変、好評を得ています。

各イベントでは企業と企業、企業と講演者の間の距離感が非常に短く、フレンドリーな研究会でもあります。本研究会にご興味のある方は幹事までご連絡いただければと思います。

最後になりましたが、諸活動において「産業における応用数理」等の研究部会とも連携しています。これら産業を対象とした活動を通じ、産業における計算機科学あるいは応用数理が有効に機能し、産業が活性化することを願うばかりです。

本研究会に関する情報および「産業における応用数理」に関する情報は(https://na.cs.tsukuba.ac.jp/mono/)、(http://na.cs.tsukuba.ac.jp/acmi/) をご参照下さい。