研究部会だより

数理ファイナンス研究部会の活動について

2021年02月02日

関根 順

せきね じゅん

大阪大学

2019年度より数理ファイナンス部会主査を中央大学石村直之先生より引継ぎました大阪大学の関根です。本部会は、1992年に創設されて以来、数理ファイナンス分野の理論・応用に関する研究発表や交流の場を提供しております。主査が管理している部会のメーリングリストには現在約30名の方が登録されており、このメンバーが中心となって年2回の学会活動、すなわち、年会と研究部会連合発表会での部会主催セッションの開催、を行っております。研究発表内容に関しては、必ずしも数理ファイナンス分野そのものに限っているわけではなく、何か関連していればよし、あるいは面白い研究(のシーズを含んでいる)ならよし、というスタンスで広く募っております。近年では、1)確率的数値解析手法の研究、2)確率微分方程式モデルの研究、特にシミュレーション手法(離散化)の研究、3)金融・信用リスクの計量化手法や実データを用いた実証分析に関する研究、4)確率制御理論とそのファイナンス分野への応用に関する研究、5)保険数理の問題への確率解析的アプローチ、6)”データ指向的”、”データ駆動的”な手法に基づくファイナンス研究、などが多い印象です。参加者の内訳ですが、学術機関所属の教員をメインにして、産業界(金融機関等)所属の研究者、大学院学生等により構成されています。このところ毎回大学院生による研究発表も含まれており、若手の「お披露目」の場にもなっているようです。さらに、年2回のセッションでの研究発表で気になった話をより詳しく聴きたいというような際には、拠点的な大学で開催されている定例的な研究セミナーやワークショップに招待して、じっくり話をしてもらって知見をコミュニティで共有する、といった国内研究者間ネットワークを活かした流れも確立できているように思われます。どの分野やトピックスにも流行り廃りがあることと思いますが、個人的には、確率的数値解析手法の研究(確率微分方程式モデルや点過程モデルに関する数値シミュレーション・数値解析を含む)は、数理ファイナンス分野に留まらず、今後しばらく廃れることのない重要な応用数学の研究分野の一つであり続けるのではないかと考えております。過去を振り返っても、準モンテカルロ法の研究や確率微分方程式の効率的離散近似手法の開発などには、数理ファイナンス・金融工学分野に関わる研究者達が大きく貢献してまいりました。また近日では、機械学習手法やGPUコンピューティング手法と組み合わせた確率的数値解析手法を構築して「次元の呪い」を打破したいという試みが盛んに行われており、これも面白いかもしれません。我々の部会も、「確率的な」といった側面にはこだわりつつ、数値シミュレーションや数値解析手法の研究発展に、理論・応用両面から幾許かでも貢献してゆきたいと考えている次第です。最後に、本年度突如として始まったオンライン形式の部会活動について、個人的雑感を述べたいと思います。従来型の対面型研究集会の良さ、すなわち、日常業務・雑務から解放されて出張して、”フレッシュな”状態で研究会に参加し没頭し、セッション中のみならず、休み時間中や昼飯や夕飯時にも議論・情報交換・雑談・噂話等々を交える良さ・・・はいやというほどわかっているつもりですが、一方で、オンライン形式の研究集会の便利さも否定できません。実際、参加者数自体は、オンライン型研究集会の方が増えているのではないか?と想像しております。また、研究発表自体は、対面式においてもスライドを映しながらしゃべる形式がほとんどでしたので、その意味ではZoomでのオンライン発表と大差ないとも言えます。個人的には、オンライン形式の研究集会は今後(コロナ禍が去っても)残ってゆくのでははないか?と想像しておりますが、その場合の「休み時間での雑談」部分をなんとか充実させてゆくべく工夫をしてゆきたいと考えております。チャットツール?別途雑談用Zoom開設?あるいは新たなアプリを使う?あれこれ想像していますが、ぜひこれに関しましては、学会内でもノウハウを共有させていただければありがたく思っておりますので、よろしくお願い申し上げます。