研究部会だより

「数理的技法による情報セキュリティ」研究部会の紹介

2020年10月13日

吉田 真紀

よしだ まき

国立研究開発法人 情報通信研究機構

オンラインショッピングや電子申請など、インターネットにおいて安心・安全な情報通信するため、暗号を用いた通信プロトコル(暗号プロトコルと呼ばれます)などのセキュリティ技術が提案・利用されています。たとえば、オンラインショッピングでは、クレジットカード情報などを安全に送るため、SSL/TLS が利用されています。また、AppleとGoogleが開発した新型コロナ濃厚接触者検知アプリでは、匿名化とプライバシ保護のために共通鍵暗号が利用され、暗号通貨では偽造防止と二重使用検知のために電子署名とハッシュ関数が利用されています。このようなセキュリティ技術は専門家の手により安全性に配慮して慎重に設計される必要があります。その一方、悪意を持った利用者から他の利用者を守るなどの高度な安全性も要求されつつあることから、専門家であってもその安全性を十分に検証することは容易ではありません。実際に、広く使用されている技術に欠陥が見つかることも多くなっています。

そのような状況の中で、数理的技法(形式手法、フォーマルメソッドとも呼ばれます)を、セキュリティ技術やシステムの安全性の検証に利用する研究が活発に研究され、標準化活動においても、その成果が参照されています。本研究部会では、数理的技法を用いてセキュリティ技術やその実装の安全性を厳密に評価・検証するための研究について議論しています。

研究部会は年会にオーガナイズドセッションを企画し、数理的技法と情報セキュリティに関連する発表を広く募集しています。また、国際会議で発表された最先端の研究テーマや関連する研究テーマの数理的技法の応用的な側面についてチュートリアル講演も実施しました。チュートリアル講演は産学多岐に渡っております。

2020年
「整数線形計画を用いた差分解読の差分パス探索」佐々木 悠 博士(NTT)
2019年
「情報セキュリティへの符号理論の応用」萩原 学 先生(千葉大学)
2018年
「ProVerifを用いたTLS1.3ハンドシェイクプロトコルの形式検証」荒井 研一 先生(長崎大学)
「同種写像暗号の数理」高島 克幸 博士(三菱電機)
2017年
「重み付き線形マトロイド・パリティ」岩田 覚 先生 (東京大学)

当研究部会に関する情報については研究部会Webページ(http://fais.jsiam.org/) をご参照下さい。