研究部会だより
「産業における応用数理」研究部会の紹介
2020年09月07日
櫻井 鉄也
さくらい てつや
筑波大学 人工知能科学センター
本研究部会は、産業における数理に関わる共通の問題点を把握し、これらの問題に対して有効な手法を、企業や研究所、大学等の研究者の分野横断的な協力の下で見いだすことを目的とし、2013年4月に設立されました。また、本研究部会は、“産業界の競争力強化に資する数理”を目指し、産学双方の会員間の連携を促進する場としての役割を果たすことも併せて目的としています。上記の設立目的を達成するために、応用数理と実問題の研究者が既存の分野や業種間の壁にとらわれないで問題解決に向けて議論をする場として研究会やセミナーを開催しています。
日本応用数理学会の研究部会連合発表会や年会でのオーガナイズドセッションの開催の他、単独研究会およびソフトウェアセミナーを開催しています。研究会での講演者は主に企業研究者で、企業や研究機関の研究者を中心に講演をしていただいています。また、大学の研究者や学生も産業応用を意識した内容で講演をしています。
これまでの研究会での講演内容の一部をタイトルのみ列挙すると、各企業で実際に行われている大規模シミュレーションに関するもの :
『半導体製造プロセスにおける悪条件線形方程式の解法』
『ドライバー理解に向けたドライバーモニタリング技術の進化』
『インバリアント分析を用いた異常予兆検知の大型プラントへの適用と最近の進展について』
『製品の中の界面現象の数理』
『ガルバニック腐食の数値解析モデル』
『構造解析向け超並列固有値ソルバの大規模実応用モデルにおける性能評価』
アルゴリズム・ソフトウェア開発に関するもの:
『地震波動方程式の数値解の平滑化スキーム』
『半導体の抵抗率測定法の開発に現れるいくつかの応用数学の問題』
『オンラインニュースサイトにおけるネットワーク中心性尺度の活用』
『高次元のシミュレーションベース連続最適化に対する確率的探索アルゴリズム』
AIやデータ解析手法などに関するもの:
『待ち行列を用いた宅配ボックスサービスのモデル化と解析』
『データコラボレーションによる分散データ協調解析』
『複素モーメント型部分空間を用いた教師あり次元削減法の提案』
『インフラ点検のためのAIによる画像特徴抽出法』
『行列分解型ディープニューラルネットワーク計算法および単一細胞解析への応用』
など、産業と応用数理をキーワードに多岐にわたります。
また、今年はCOVID-19の影響で開催していませんが、これまでにソフトウェアセミナーとして、有限要素法解析ソフトFreeFem++のソフトウェア講習会『FreeFem++で学ぶ現象と数理』や『最適設計の数理とその実践』などを開催しました。
今後の活動計画として、これまでに引き続きオーガナイズドセッションや研究会の開催、日本応用数理学会の他の研究部会と連携してソフトウェアやデータ解析手法などの企業研究者向け講習会等を行っていく予定です。本研究部会は、平成26年度に発足された「ものづくり企業に役立つ応用数理手法の研究会」(ものづくり研究会)とも密接に連携して活動しています。
当研究部会に関する情報については部会Webページ(http://na.cs.tsukuba.ac.jp/acmi/) をご参照下さい。また、ものづくり研究会については (https://na.cs.tsukuba.ac.jp/mono/)をご覧ください。