研究部会だより

「行列・固有値問題の解法とその応用」(MEPA)研究部会の紹介

2014年12月15日

曽我部知広

そがべ ともひろ

MEPA研究部会主査,愛知県立大学

当研究部会では,応用数理分野における数値計算の基盤を担うべく,線形計算の理論 (線形方程式,固有値問題,特異値問題,最小自乗問題などの解法の開発や解析) およびスーパーコンピュータ上で理論を実用化する並列化手法や計算機実装など,理論と実用の両面を重視して研究を推進している.そして,これらの方法を利用する幅広い応用分野の研究者と交流することで新しい問題解決手法を模索し発見することを目的とし活動を行っている.

組織体制として,2013 年度から松尾宇泰先生 (2011-2012 年度主査,東京大学)の体制を引継ぎつつ,新たに企業幹事を迎え入れた新体制(相島健助幹事 (東京大学),緒方隆盛幹事 (NEC),櫻井隆雄幹事 (日立製作所),多田野寛人幹事 (筑波大学),宮田考史幹事 (名古屋大学))で運営を行っている.新体制発足と同時にアドバイザリー委員会を設置し,アドバイザリー委員として片桐孝洋先生 (東京大学),櫻井鉄也先生 (筑波大学),速水謙先生 (国立情報学研究所),松尾宇泰 先生(東京大学)にご就任いただいた.さらに,当該分野で一線の研究者から構成される33名の強力な運営委員の支えにより活発な活動を行える環境がある.なお,過去の組織体制・活動については,研究部会だより[ 応用数理,Vol.20, No.1, 2010 ]を参照されたい.

当研究部会の活動の特色として,日本応用数理学会年会,研究部会連合発表会に加え,他学会や日本応用数理学会の他研究部会と横断的な交流をしていることが挙げられる.具体的には,7月のSWoPP (並列/分散/協調処理に関するサマー・ワークショップ,日本応用数理学会からは当研究部会,電子情報通信学会から2研究会・情報処理学会から4研究会が参加) や12月の大学院生・企業研究者を主な対象とした応用数理セミナー (「科学技術計算と数値解析」研究部会 (杉原正顯主査) および「計算の品質」研究部会 (大石進一主査) と連携) が挙げられる.

12月の単独研究会は当研究部会が必要に応じて企画を行える環境があり,2013年度の単独研究会では情報処理学会HPC研究会 (須田礼仁主査) と連携し,HPC研究会協賛による単独研究部会を開催した.単独研究会では,今村俊幸先生 (理化学研究所) 「数値線形計算に現れる通信削減アルゴリズムについて」,山本有作先生 (電気通信大学) 「エクサフロップス時代に向けた線形計算アルゴリズムの課題と研究動向」,岩下武史先生 (京都大学) 「時空間タイリングによる3次元FDTD法の通信削減実装」による招待講演が行われた.線形計算の理論・解法を次世代のスーパーコンピュータ上で実現するための課題は何か?という点が明確になり,大変有意義な企画であった.今後も,情報処理学会HPC研究会との交流・連携ができればと考えている.

今後の当研究部会の活動の方向性について,長期的視点では線形計算の数理の深化や線形計算アルゴリズムの高性能化(高速・高精度化・高並列化)を継続して行う.短期的・中期的視点では,これまで交流が殆どなかった他研究分野 (例えば,ビッグデータ (巨大グラフ解析),機械学習,量子計算,暗号理論) や企業研究者との連携による新たな研究課題の模索・意見交換により当該分野の活性化に貢献できればと考えている.当研究部会に関する情報については部会 URL: http://na.cs.tsukuba.ac.jp/mepa/ を参照されたい.