研究部会だより
「科学技術計算と数値解析」研究部会とUTNAS
2014年09月13日
齊藤 宣一
さいとう のりかず
東京大学大学院数理科学研究科
「科学技術計算と数値解析」研究部会は、日本応用数理学会に研究部会制度ができると同時に、加古孝先生(電気通信大学教授(当時))によって設立された。設立趣旨には、『科学技術計算は、コンピュータの急速な発達に伴って、これからの人類の活動のあらゆる側面で重要な役割を果たし続けていくと考えられる。 特に、未知の現象の「予測」と新たな工学的対象の「設計」と「制御」は「科学技術計算」が取り扱うべき中心的な課題であり、適切な「数理モデル」を出発点とする、正しい「計算アルゴリズム」に基づく「科学技術計算」が求められている。 また、計算結果の正しさを検証し、新しい手法を生み出すためには「数値解析」が不可欠な研究課題である』とある。設立以来、年会と部会連合会では、毎回、少なくとも2セッションにまたがるオーガナイズドセッションを行っている。また、年末には、「計算の品質」、「行列・固有値問題の解法とその応用」研究部会とともに、学部生、大学院生、企業の研究者・技術者を対象にした応用数理セミナーを開催している。部会の主査は、しばらくは、加古先生自身が務められていたが、現在は、杉原正顯先生(青山学院大学教授)に交代している。
「科学技術計算と数値解析」研究部会への参加者は、複数の部会にまたがって活躍している人が多い。また、必ずしも応用数理学会員ではない研究者とも連携し、様々な活動を行っている。今回、この記事を書くにあたり、主査の杉原先生から、そのなかでも、東大数値解析セミナー(UTNAS)について紹介して欲しいとの要望があったので、以下では、UTNASの紹介をさせて頂く。
UTNASは2010年4月から定期的(おおよそ隔週)に行われているセミナーであり、毎回、一人の講演者に60分の研究発表をしてもらい、その後、長めの質疑応答を含めた討議を行っている。会場は、駒場キャンパス(数理科学研究科)と本郷キャンパス(工学部6号館)の教室を交互に利用し、世話人は、齊藤宣一(東大数理科学研究科)と松尾宇泰 (東大情報理工学系研究科)が務めている。2014年の9月の段階で、63回を数えることができた。
東京大学数理科学研究科では、ほぼ毎日、数学に関わるいろいろな分野の専門的なセミナーが複数行われている(原則、すべて公開セミナーである)。しかし、数値解析を主たるテーマとしたセミナーは、2009年当時までは開かれていなかった。一方、当時、数理科学研究科ではグローバルCOE事業「数学新展開の研究教育拠点」が始まっており、そのなかで、情報理工学研究科と密に連携した企画が期待されていた。そこで、齊藤が松尾先生に相談し、結果として、「数値解析」のキーワードの下で、様々な専門分野の研究者が一堂に参集し、議論を重ねることで、各分野の最新結果や将来への展望、あるいは歴史的な経緯等についての情報を共有する機会を作ることを目的として、UTNASを立ち上げた。はじめは、GCOEセミナーの一部として開催していたが、GCOE事業終了後は、独立したセミナーとして行っている。
講演者、および参加者は、国内外の大学に属する研究者・院生、公的な研究機関や企業の研究者・技術者など様々である。また、興味の対象も、数学理論の深化から産業応用まで幅広い。さらに、現役の学生・院生にとっては、歴史上の人物と思えるような年配の先生に出会える機会が多いのも、このセミナーの特徴である。いずれにせよ、多くの人達が、定期的に顔を合わせ、討議する機会を作ることが最も重要であると考え、セミナーを運営している。より詳しくは、下記のWebページを参照して欲しい。
「科学技術計算と数値解析」研究部会 http://www.sr3.t.u-tokyo.ac.jp/scna/
東大数値解析セミナー(UTNAS) http://www.infsup.jp/utnas/