研究部会だより

数理ファイナンス研究部会 部会便り

2018年03月09日

石村 直之

いしむら なおゆき

中央大学商学部

数理ファイナンス研究部会は日本応用数理学会のうちでも古くから活動してきた研究部会の一つである。正式には1992年7月の理事会における承認をもって創設された。初期の研究部会便りや活動報告を列挙しておくと

応用数理3巻1号 研究部会便り(1993年3月15日):今野浩「数理ファイナンス研究部会」http://ci.nii.ac.jp/naid/110007390413

応用数理3巻2号 研究部会便り(1993年6月15日):岸本一男「数理ファイナンス研究部会」http://ci.nii.ac.jp/naid/110007390432

応用数理4巻1号 研究部会便り(1994年3月15日):楠岡成雄「『数理ファイナンス』研究部会」http://ci.nii.ac.jp/naid/110007390476

応用数理4巻4号 部会報告(1994年12月15日):今野浩「数理ファイナンス研究部会(第1期)報告」 http://ci.nii.ac.jp/naid/110007390526

応用数理5巻2号 部会報告(1995年6月15日):岸本一男「『数理ファイナンス』研究部会第2期への継続報告にかえて」http://ci.nii.ac.jp/naid/110007390565

応用数理7巻1号 部会報告(1997年3月17日):楠岡成雄「数理ファイナンス研究部会第3期にあたって」http://ci.nii.ac.jp/naid/110007390685

応用数理11巻2号 学術会合報告(2001年6月15日):溝淵浩司「数理ファイナンス研究部会」http://ci.nii.ac.jp/naid/110007390937

である。これらをひもとくと,数理ファイナンス研究を日本に定着させようとした創設者の方々の情熱と献身的な活動が伺える。しかしながら,1991年からの日本でのバブル景気崩壊,さらには2008年からの世界的な金融危機では,本研究部会の主な研究対象である金融工学そのものに疑いの目が向けられることとなった。そのためか研究の世界でも,この間における熱気はひところのようではなかったと思われる。逆にいえば,地に足の着いた堅実な研究活動が続けられた。

さてこの数理ファイナンス研究部会の活動報告は,JSIAM Online Magazine (JOM)に2013年12月17日に公表(http://jom.jsiam.org/3574/)されて以降の内容である。この間は年会でのオーガナイズド・セッション(OS)と,研究部会連合発表会でのセッションの年2回を基本的な活動の場としてきた。応用数理学会の研究部会という面を強調してか,基礎的かつ数理的な内容を中心とした地道な研究発表が多かったように見受けられる。本稿執筆者は現在本研究部会主査を務めているが,研究部会の運営には多くの学会員のご協力を頂いている。そのうち一部の先生方のお名前を挙げると,顕著な貢献をされてきた成田清正教授は2015年3月をもって定年退職され,現在は神奈川大学名誉教授である。また,赤堀次郎立命館大学教授,小俣正朗金沢大学教授,岸本一男筑波大学教授,安田和弘法政大学准教授,山崎和俊関西大学准教授,山中卓武蔵大学准教授の方々には引き続き多大な協力をいただいている。

特筆すべき事実には,論文発表が比較的に活発な研究部会だということがある。例えば,研究部会と関連の強いJSIAM Letters誌では,2017年8月まで19編の論文が公表されており,これは本稿執筆時20ある研究部会のうちでも4番目の多さである。また,研究部会とは直接の関係はないが,Japan Journal of Industrial and Applied Mathematics (JJIAM)ではArea 4においてFinancial MathematicsとInsurance Mathematicsが明示されている。応用数理の世界では,数理ファイナンス関連は欧米を中心とする諸外国の方がむしろ研究が盛んであり,JJIAMへの投稿も多い傾向にあるようだ。数理ファイナンス研究部会としても良き刺激を受けている。

最後に今後の活動の可能性に触れてこの報告を終えることにしたい。それはフィンテック(FinTech)についてである。これは金融(Finance)と情報(Information Technology)が融合されてできた造語であるが,実務の世界では急速な広がりをみせている技術革新である。応用数理がこの新しい分野にどのように切り込めるかはまだはっきりしないが,少なくとも取り組むべき課題は多いように見受けられる。佐古和恵応用数理学会会長と関根順大阪大学教授によって研究の方向性が議論され始めており,日本発の新しい研究の視点が示されれば喜ぶべきことである。