研究部会だより

研究部会「CAEモデリングとデータ活用」の活動について

2022年10月21日

山田 知典

やまだ とものり

東京大学大学院工学系研究科システム創成学専攻

有限要素法の前処理として必要不可欠なメッシュ生成技術は、解析プロセスにおいて重要な位置を占める技術である。実際、有限要素法の計算自身は数時間から数日でできるのにもかかわらず、それに必要なメッシュの生成は人手によって1ヶ月から3ヶ月もかかることが少なくなく、その合理化・効率化が求められていた。1990年代には製造業におけるCAEの適用範囲は格段に拡大しており、3次元CAEのためのメッシュ生成技術の高度化は世界的にも注目を集めており、メッシュ生成手法の議論のみならず、メッシュフリー法、粒子法などの新しい潮流も生み出されてきた。このような背景のもと、1998年12月に矢川元基東京大学名誉教授を主査とする「メッシュ生成研究部会」が発足した。それ以降、本研究部会ではメッシュ生成技術を中心として情報交換を行ってきた。

発足から20年余を経てメッシュ生成技術が着実に進歩してきた一方で、計算機性能の向上はとどまるところを知らず、解析対象はさらなる大規模化・複雑形状化・複合現象化にさらされており、メッシュ生成にかかる期間はそのモデルの妥当性検証も含めて設立当時に比べ益々長期間化している。加えて、近年のAI技術の発展により、CAEを学習データの生成器として利活用する、さらには、学習済みのAIでCAEを拡張するAI-Driven CAEへの期待が高まっている。そこで本研究部会ではメッシュ生成のみならず、メッシュフリー法を含めたCAEモデリング技術全般の高度化と、AIとの連携を指向したCAEデータ活用の推進を目的として活動を行うこととし、2018年に「CAEモデリングとデータ活用研究部会」と名称を変更し、さらに活動範囲を広げた。

活動としては主に日本応用数理学会の年会や研究部会連合発表会でセッションを企画し、講演、情報交換を行っている。コロナ禍の状況にあった2021年度の研究部会連合発表会(オンライン開催)でもセッションを設けた。講演内容は形状処理技術やCAE分野での機械学習適用事例などであった。このセッションでの講演題目は次のとおりとなる。

・BRepモデルの深層学習による特徴形状抽出

○長谷部 達也((株) 日立製作所), 片岡 一朗((株) 日立製作所), 片山 絵里香((株) 日立製作所), 小野寺 誠((株) 日立製作所)

・三次元形状のボクセル化における姿勢と幾何誤差の評価

○日高 琉斗(中央大学大学院理工学研究科), 森口 昌樹(中央大学理工学部)

・機械学習の工学問題適用のためのデータ生成手法と学習方法の分類

○和田 義孝(近畿大学)

・シミュレーションと機械学習による逆問題解析の検討

○山田 知典(東京大学)

CAEとAIの融合についてはまだ始まったばかりである。このため、幹事である近畿大学和田義孝教授、日立製作所片岡一朗氏、中央大学森口昌樹准教授、そして会員の皆様と協力しつつ着実に進展させていく必要がある。ご賛同いただける多くの方の参加をお待ちしている。