研究部会だより
応用数理ものづくり研究会の紹介
2015年11月02日
高田 章,櫻井 鉄也,井手 貴範
たかだ あきら,さくらい てつや,いで たかのり
旭硝子,筑波大学,アイシン・エィ・ダブリュ
神戸に設置された「京」コンピュータの産業利用が進む中,「第3の科学」と呼ばれてきたHPC(High Performance Computing)技術はさらなる産業普及の時代を迎えています.一方「ビッグデータ」のキーワードで代表され,「第4の科学」とも呼ばれるデータ科学はビジネスの現場を中心に積極的な戦略利用が図られ,今後はものづくりの現場へのさらなる応用展開が期待されています.
日本応用数理学会の中でも2013年4月に「産業における応用数理」研究部会が発足し,産業界の競争力強化に資する数理を目指した新しい活動が始まりました.産学連携をさらに推進していくためには,これまでの研究部会の運営方式でカバーしきれなかった試験的な取り組みが極めて重要であるという認識のもと,「産業における応用数理」研究部会と強力な連携を取りながら,「研究会」という名称で昨年の8月から活動を開始しました.
以下に本研究会の特徴をまとめます.
[1]毎年参加企業の募集をし,参加費を徴収しています.通常の学会活動のように個人参加を運営のベースとしていないのは,会社単位で参加してもらい研究会活動の成果を会社全体で応用展開していくことが社会的に重要と考えているからです.原則,1社あたり3名まで参加可能です.活動内容を知ってもらうために正式参加する前に1回だけ無料で体験参加することもできます.学会活動を支援していただいている賛助会員企業には参加費割引の特典もあります.公的機関・アカデミアの方々も,研究会から顧問、幹事をお願いする方を除けば,企業と同じ条件で参加できます.
[2]現在,業種横断的に23社のものづくり企業が参加しています.隔月で技術セミナーを開催していますが,毎回40名前後の企業人が参加し応用数理技術の産業応用について議論しています.
[3] 実のある産学連携を実現していくためには,企業人が主体的に企画・運営に参画していくことが重要です.幹事会には8名の企業人参加してもらっています.一方,シミュレーション分野およびデータサイエンス分野の講師選定,技術セミナーの会場設営等ではアカデミア幹事から絶大な協力を得ています.
[4]隔月の技術セミナーは,先端的な研究を紹介する講演2件(シミュレーション分野とデータサイエンス分野),参加企業の事例紹介,前回のセミナー・事例紹介に対してグループ討論した内容の紹介,から構成されています.
[5]参加企業にとっては,講演・事例紹介を通じて種々の最新の技術動向を知ることが大きなメリットですが,異業種の研究者・技術者との交流のメリットも大きな特徴です.8月には技術セミナーの終了後に,希望者を募り,「専門部署と現場の連携に関する懇談会」も開催しました.10社22名が参加し仕事を進める上での苦労・工夫について自由に意見交換を実施した結果,大変好評でした.
数理科学分野は他の分野と比べて応用の出口から遠い,とこれまでは社会で考えられてきましたが,「第3の科学」と「第4の科学」が第四次産業革命を牽引する時代がすぐそこまで来ています.本研究会がその一翼を担えるよう活動を続けて参ります.「産業における応用数理」等の研究部会との連携もますます重要です.引き続き、活動のご理解・ご支援をいただくと同時に,本研究会の活動に興味のある皆様は幹事までご連絡いただければと思います.