研究部会だより
「数理政治学研究部会」について
2014年12月15日
大山 達雄、岸本 一男、一森 哲男
おおやま たつお、きしもと かずお、いちもり てつお
政策研究大学院大学、筑波大学、大阪工業大学
数理政治学とは、われわれの社会、日常生活にとって身近でかつ重要な“政治”を取り巻くさまざまな問題に対して、各種データに数学的、統計的な理論、手法を適用しつつ定量的に分析しようとする学問分野です。研究対象としては選挙、投票行動、公共選択行動、社会調査、社会構造、住民意識等々かなり広範に及んでおります。したがってこれらの問題の解決には評価基準、選好、価値観の多様性等、社会科学特有の困難さが伴うため、長年にわたる多くの研究者達の努力にもかかわらず未解決、あるいは解決不可能であろうとされる問題も多々あります。
この研究部会は2005年1月17日に第1回部会を開催しました。最初の主査は中央大学のS. Reed教授、幹事は筑波大学の岸本一男、大阪工業大学の一森哲男でした。2008年4月より主査は大山達雄(政策研究大学院大学)に代わり現在に至っています。
毎年開催されます学会研究部会連合発表会において数名がそれぞれの研究成果を発表しております。研究部会独自の開催は東京六本木にある政策研究大学院大学を会場として、隔月の土曜日午後にほぼ定期的に開催しております。それぞれの講演者に対して長い時間を配分し、内容のある議論が十分に尽くせるように努めています。直ちに質問でき、新しい参加者でも自由に意見を述べてもらう雰囲気を保っており、発表者と参加者が互いに理解を深め、研究レベル向上に寄与しています。メンバーの中には遠方の大学の方、海外の大学、研究機関の方もおられ、幅広い範囲のメンバーを擁しています。
最近の発表題目を列挙してみます。
(1) 「Vote Compassの概要とインターネット選挙」
(2) 「我が国国政選挙での棄権を考慮した得票分析」
(3) 「ダイバージェンスを用いた議席配分方式の偏り」
(4) 「事前と事後の二期間モデルと空間競争の関係について」
(5) 「一般情報ダイバージェンスと議席配分方式の関係について」
(6) 「2大政党制に関する一考察」
(7) 「議員定数配分とダイバージェンス」
(8) 「展開形ゲームの部分ゲーム完全均衡解による日本の国選挙の分析」
(9) 「一票の格差のリスク実測による格差是正方策への評価:0増5減案は格差を是正するのか?」
(10) 「議席配分問題とスケジューリング問題」
(11) 「除数方式と離散最適化(単純制約・分離狭義凸関数の最小化)との関係」
(12) 「緩和除数方式について:配分の偏りの観点から」
(13) 「Policy Dispersion in a Two:Party System」
(14) 「討議/熟議民主主義の実証研究」
(15) 「わが国政治の諸問題とORへの期待」
(16) 「空間的投票理論における政党座標値計算の精緻化」
(17) 「レニーのエントロピーに基づく議席配分方式について」
(18) 「韓国の大統領選挙の空間的投票理論による分析:ソウル市について」
(19) 「我が国総選挙(38~40 回)における選挙区内対立軸の研究」
(20) 「我が国戦前期の政党対立軸の決定要因とその変遷」
(21) 「政治科学におけるメディアの内容分析研究」
(22) 「議席配分のための新5方式とそれらの偏りについて」
(23) 「アロー・パラドックスの局所不安定性について」
(24) 「我が国の戦前期国政選挙における政党座標計算の諸問題」
(25) 「中道有権者低投票率についての一解釈」
“政治”はわれわれが社会生活をおくっていく上でわれわれが関心を持つべき、そして注意を払うべき最も重要な課題の一つです。多くの皆さんが積極的に、そして自由に気楽に参加されることを期待し、お待ちしております。