研究部会だより

折紙工学研究部会の近年の活動

2023年10月05日

石田 祥子

いしだ さちこ

明治大学理工学部

折紙工学研究部会では,平坦な素材を折ることで形を作り上げる「折紙」の技術を工学に応用すること,および折紙の幾何学的な性質について数学的な観点から探究し,その応用範囲を探ることを目的とした研究を推進している.部会設立の経緯や2019年度までの活動については,過去のJSIAM Online Magazineの記事(https://jsiam.org/online_magazine/news_presentations/3300/ およびhttps://jsiam.org/online_magazine/news_presentations/3718/ )に詳しく述べられているので,本記事ではそれ以降の活動について述べたいと思う.

2021年度から主査が交代になり,主査:三谷純氏(筑波大学),幹事:石田祥子(明治大学,筆者),斉藤一哉氏(九州大学)として第2期がスタートした.

折紙工学研究部会の主な活動としては,日本応用数理学会年会や研究部会連合発表会でのオーガナイズドセッションの開催,明治大学先端数理科学インスティテュート(MIMS)共同研究集会の開催が挙げられる.近年の発表題目や発表者リストはウェブサイト(https://mitani.cs.tsukuba.ac.jp/origami_eng/index.html )にまとめられているのでご覧いただきたい.折紙研究の特性として,折紙という独立した学問が存在するのではなく,工学,コンピュータサイエンス,数学と幅広い分野の専門家がそれぞれの視点で折紙に関わっているため,折紙という共通項がそれぞれの学問をつなぐ横糸的な役割を担っており,学問に広がりがある点が大きな魅力である.年会や研究部会連合発表会のオーガナイズドセッションでは,大学院生の研究発表の場,若手研究者のステップアップの場として,発表枠が全て埋まってしまうほどの大盛況ぶりである.2022年度には今田凛輝氏(東京大学)が年会若手優秀講演賞を受賞した(https://jsiam.org/award/young_lecture_award/young_lecture_award2022/ ).MIMS共同研究集会は,このような折紙研究を牽引する国内外の著名な研究者に講演を依頼しており,研究者間の情報交換および交流の場となっている.本研究集会は事前登録をすればどなたでも無料で参加できることから,近年のオンライン開催も相まって,研究を始めたばかりの学生でも第一線で活躍する研究者の研究に触れることができると好評である.異分野の研究者も気軽に参加していただきたい.2023年度も12月に開催が予定されているので,ご興味のある方はウェブサイト (http://cmma.mims.meiji.ac.jp/events/jointresearch_seminars/index_2023.html )から参加申し込みをしていただければと思う.

コロナ禍で行動が制限された中であっても,折紙工学研究部会はオンラインを通してこれらの活動を継続してきた.ほかに,日本応用数理学会学会誌「応用数理」にて,2020年には折紙工学に関するチュートリアル( https://www.jstage.jst.go.jp/browse/bjsiam/30/0/_contents/-char/ja ),2021年にはフォーラム(https://www.jstage.jst.go.jp/browse/bjsiam/31/0/_contents/-char/ja )を掲載するなど,本学会に貢献している.2023年8月に開催された応用数理の国際会議The 10th International Congress on Industrial and Applied Mathematics (ICIAM2023)では,折紙工学研究部会はオーガナイズドセッション Origami Engineering (https://iciam2023.org/accepted_ms#00384_Origami_Engineering_12 )を開催するだけでなく,萩原一郎氏(明治大学)によるInvited Lecture (https://iciam2023.org/561#Prof_Ichiro_Hagiwara ),三谷純氏(筑波大学)によるPublic Lecture (https://iciam2023.org/1900#Prof_Jun_Mitani ),萩原一郎氏,三谷純氏,上原隆平氏(北陸先端科学技術大学院大学),舘知宏氏(東京大学),岩瀬英治氏(早稲田大学),石田祥子(明治大学)による折紙のExhibitionにて研究成果を発信した.「目で見て分かる」「触って分かる」は折紙の魅力の1つである.ICIAM2023の総参加者数は5000人を超えたとのことであるから,このように多くの研究者に折紙に触れていただけたことを大変喜ばしく思う.

最後に,部会内の活動とは離れるが,2024年度には折紙の国際会議The 8th International Meeting on Origami in Science, Mathematics and Education (8OSME)(http://www.impactengineering.org/8OSME/ )が開催される.ICIAMと同じくOSMEも(コロナによる開催延期がありつつも)4年に1度の国際会議であり,折紙研究の一大イベントである.各国の折紙研究グループが持ち回りで主催しており,第8回となる今回はオーストラリア・メルボルンで開催される.本部会関係者も積極的に運営に関わっているので,海外の研究者との結びつきを強化し,日本応用数理学会の折紙工学研究部会のさらなる発展を目指したい.