学会ノート

森正武先生追悼特集(1):森正武先生を偲んで

2017年12月05日

大石 進一

おおいし しんいち

日本応用数理学会前会長,早稲田大学理工学術院

大変残念ながら森先生がご逝去されました。ここに謹んでお悔やみを申し上げます。森先生は本学会の設立に大きな役割を果たされました。本学会が今の盛況な姿にあるのは森先生のご努力によっているところが大であり、深く感謝いたしております。

 

ご研究面では数値解析において、多くのご業績を残されています。国際的に先導された分野も多く、特に2重指数関数公式による数値積分公式の創始と発展のご研究は日本の研究力を世界に轟かせたもので、本会業績賞を受賞されておられます。2重指数関数公式は高橋秀俊先生との共同のご研究ですが、ニュートンの公式のように、実関数の微分可能性を利用した誤差公式ではなく、複素関数としての微分可能性や解析性に基づいたものです。発見の経緯としては台形公式が無限積分に対して実微分可能性だけでは説明できない高精度性を持つという現象論から出発して、その不思議な高精度性を解き明かしていく中で、数理的にしっかりした背景を持った2重指数関数公式が形成されていったということで正に応用数理の研究の見本ともいうべき世界的な業績になっております。我々後進にとって、このような世界的研究を日本から出せるという、勇気を与えてくれるものになっていると思います。

 

先生は教育面においても多くのご業績を残され、お弟子さんには杉原正顯先生を始めとして錚々たる方々がおられます。大変な誠実なお人柄で、学会のためにご尽力されるお姿は特に印象的でした。例えば稚内で開催した応用数理学会年会で特別講演をお願いした時にも、ご快諾いただき、素晴らしいご講演をしていただいたことが深く印象に残っております。

 

最近に至るまで、お元気で研究に励んでおられるご様子でしたが、急にご訃報に接して、驚いております。ご冥福を改めてお祈り申し上げます。