学会ノート

ICIAM2023招致活動報告

2017年10月24日

大石 進一, 岡本 久, 柳澤 優香

おおいし しんいち, おかもと ひさし, やなぎさわ ゆうか

早稲田大学

1. はじめに
2017年5月20日,スペイン王国バレンシア市にて開かれたICIAM総会で,東京がICIAM2023の開催都市に選ばれました.会場は早稲田大学早稲田キャンパスです.招致成功に向けてご尽力いただきました関係者各位には,この場をお借りして御礼申し上げます.
ICIAMとは,International Congress on Industrial and Applied Mathematicsの略で,4年に一度,世界中から数千人の研究者が集結する,応用数学の分野では最大の会合で,応用数理の国際的な振興・交流を目的としています.ICIAMに関する詳細は,同特集の三井斌友先生による『ICIAM 2023 東京への道のり』をお読みいただければと思います。
本記事では,招致成功までの主な活動をご報告いたします.今後の国際会議招致活動への参考になれば幸いです.並びに,次回ICIAM2019には一人でも多くの皆様にご参加いただけますようご案内申し上げる目的で,ICIAM2019開催都市であるバレンシアに関するレポートを載せております.ご興味を持っていただけましたら幸いです.

2. この10年間を振り返って
表1の通り,1回目に立候補した2015年会議の招致は,北京に僅差で敗れ,様々な事情から2019年会議への立候補は見送らざるを得ませんでした.そして今回,雪辱を果たすべく2度目の立候補となります.今回の提案は,図1の通り日本数学会との共催とし,図2の通り9つのポイントに絞ってアピールしました.これら9つの中でも特に,6年間に渡りICIAMの理事を務めていらっしゃる三井斌友先生をはじめとした ICIAMへの長年の貢献(図2の1),世界に引けをとらない数々の優れた研究実績(図2の2),政府・産業界からのサポート,特に東京観光財団からの手厚い支援を得られること(図2の5)などが勝利へとつながったのではないかと考えています.総会終了後に興奮冷めやらぬまま撮影した写真が図3です(顔が疲れてます).ICIAMNewsletter (2017年8月号)でも言及されていますが,ライバルのK国も非常に魅力的な提案を用意していました.日本の提案に賛同し投票してくださった世界各国の代表者の方々に感謝の意を表したいと思います.

表1: 招致成功までの軌跡
<年> <総会開催都市> <主な出来事>
2008年 バンクーバー 2015会議に日本と北京が立候補を表明
2009年 オスロ 投票の結果,13対11で北京に敗れる
2013年 北京 4国の激戦の末,2019会議はバレンシアに決定
2016年 サンパウロ 2023会議に日本と他2国が立候補を表明.
2017年 バレンシア  K国との一騎打ちの結果,2023会議の招致成功
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図1: プレゼン資料(表紙)
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図2: プレゼン資料(目次)
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図3: 総会終了後 (左から柳澤,佐古,三井,岡本,大石,小谷,國府,山中,東京観光財団安島(敬称略))

3. 今年の主な活動
本章で,実際に行った招致活動の一部をご紹介いたします.

サイトビジット(2017/3/9-10)
4名のICIAM理事が早稲田大学早稲田キャンパス視察のため来日されました.工程は表2の通りです.キャンパスの視察は大隈講堂からスタートして講演会場となる建物を順々に巡りました(図4).事前に予行練習を重ね入念に準備はしていたものの,やはり予定通りというわけにはいかず,急遽コースを変更したり,リクエストに応えるため新たに入室許可を取ったりと大忙しではありましたが,理事たちのチェックポイントは凡そクリアしました。特に入念にチェックされたポイントが,Wi-Fi (Edurom)は網羅されているか,招待講演を3つ同時に行うための環境(1300人×3)は用意されているか,レストランの数や種類(数千人が昼食を取るに十分な数か,ハラルやベジタリアンに対応しているか)などです.また,2日目の午後はワークショップが開催され,活発な議論が交わされました(図5).ワークショップ終了後,当初は別の予定を組んでいましたが,視察中にバーバラ先生とマリア先生が日本の茶器に興味を持たれたことで,お茶会を開くことになりました.突然だったのでお茶室の予約が難しく,鎌田総長の接待室をお借りした簡易的なものではありましたが,実際に茶筅を使ってお茶を点てていただくなど体験していただき,楽しんでいらっしゃるように見えました(図6).
このように,予定外のことはたくさんありましたが,サイトビジットは大過なく終了しました.この時点の評価は「日本もK国も素晴らしい会場でICIAM2023を開催する上で問題ない. 」でしたので,最終決戦は,5月の総会になります.

表2: サイトビジット工程
 <日時>  <工程>
3/9 9:30-11:30 日本案のプレゼンテーション
11:30-12:00 早稲田大学鎌田総長を訪問
13:00-16:00 早稲田キャンパス視察(図4)
16:00-17:00 質疑応答
3/10 10:00-12:00 鶴保内閣府特命担当大臣を訪問
13:00-16:00 セミナー(図5)
16:00-17:00 演劇博物館見学 & お茶会(図6)

 

 

図4: 早稲田キャンパス(水色の建物が会場となる予定です.)
図5: セミナーの様子
図6: 演博見学とお茶会の様子

ワークショップと総会(2017/5/18-20)
ICIAMの総会(5/20)にてプレゼンテーションと投票が行われますが,その前にワークショップ(5/18,19)が開催されました.詳細はこちらのWebページをご覧ください.本番前の2日間,プレゼンテーションの最終調整はもちろんですが,日本の本気度を各国の代表の方々にアピールするため,以下のような地道な活動を重ねました.

  • 準備として,提案書を各国の代表全員に郵送(4月下旬)し,事前に目を通していただくよう依頼
  • ポスターセッション中,日本のお土産を配布し応援を呼びかけ(図7)
    (注: 講演会場内,総会中のロビー活動は禁止されていました)
  • 折り鶴を置く(日本の提案書を目立たせるため)(図8)

特にお土産の配布(図7)は,各国の方々と話すきっかけが作れたので効果的だったと考えています.総会当日の朝はやるべきことはすべてやり尽くしたという気持ちだったので大きな不安はありませんでしたが,最後の仕上げに,勝利への思いを託した折鶴を一人一人の机の上に置かせていただきました(図8).総会には32名の世界各国の代表者が参加されました(日本とK国を除く).この方たちに投票権があり(総会に不参加の場合投票権はありません),15分間のプレゼントと質疑応答,ICIAM理事によるサイトビジットのレポート,これらの内容を踏まえ投票を行います.投票数の多い方がICIAM2023の開催国になります.このような一連の活動に関して我々に貴重な助言をくださり,ご支援くださった東京観光財団ご担当者様各位に感謝の意を表したいと思います.

図7: ポスター会場で日本のお土産配布
図8: ICIAM総会会場と折り鶴(折り鶴の隣はK国のお土産)
図9: ICIAM総会中(プレゼン直前でとっても緊張してます)
図10: K国vs日本(先手はK国,後手は日本でした) 

4. バレンシアの紹介
最後に,ICIAM2019開催都市であるバレンシアに関する情報をお伝えいたします.バレンシアはマドリード、バルセロナに次ぐスペイン第3の都市で,パエリア発祥の地です.会場となるバレンシア大学は1499年に創立された歴史ある大学で,バレンシア空港からはトラムで約30分です.図12は開会式の会場でバレンシア大学付近にあり,2000人近く参加できるそうです.また,バレンシア大学の魅力の一つは図11の通り,会場から徒歩15分圏内にホテル,飲食店(図16),観光施設(図13-15)などが凝縮していて,非常に便利なところです.ICIAM2019は2019年7月15-19日に開催されます.ぜひ一人でも多くの皆様にご参加いただければ幸いです.

図11: 会場はバレンシアの中心地(会場を拠点に色々な名所にお出かけできます)
図12:開会式の会場(1300人近く座れます)
図13: 旧市街(世界遺産をはじめとした歴史的建造物群)
図14: カテドラル(旧市街で最も有名)
図15: 芸術科学都市 (海洋博物館や劇場などがある複合施設)
図16: 地中海沿いのレストラン(総会後のディナー会場)