学会ノート

学会ウェブのリニューアルについて

2022年12月13日

齊藤 宣一

さいとう のりかず

東京大学大学院数理科学研究科

2022年4月5日に、本学会の公式ウェブhttps://jsiam.orgがリニューアルされました。本記事では、これまでの学会ウェブの歴史、リニューアルの経緯と今後の運用について記録を残しておきたいと思います。

 

これまでの学会ウェブ

本学会のおける公式ウェブの歴史について簡単に振り返っておきます。本節の内容は、ネットワーク委員会の先生、特に、降籏大介、荻⽥武史、⼭中脩也の三先生から教えていただいた情報に基づきます。特に、降籏先生は、ネットワーク委員会創設時から委員をお勤めで、貴重な情報をたくさん聞かせていただきました。森正武:日本応用数理学会10年の歩み(応用数理,10巻4号,2000年)には、「1995年7月に電総研の関口智嗣氏の協力を得て本学会のホームページを開設し,インターネット利用を開始した.本学会はホームページを開設した学会としてはかなり早いほうに属する」とあります。実際、筆者は、修士課程1年生であった1995年の夏頃に、Netscape(というウェブブラウザ)でWWWをはじめて利用しましたが、自分が関係する学会で公式ウェブがあったのは本学会のみで、「さすが応用数理学会だ」と感心した記憶があります。ちなみに、当時は、大学、学部、学科の公式ウェブは、あるところはあり、無いところもある、という状態であったと思います。この1995年段階では、電総研のウェブサーバを利用させてもらっていたようです。なお、電総研とは、電子技術総合研究所の略称で、2001年に独立行政法人化され、産業技術研究所の一部となりました。その後、学術情報センター(NACSIS) が国内学会向けにウェブサービスを開始したため、そこにファイルを置かせてもらうという形に移行しました。当時 (1998年2月16日)のウェブをWayback Machineで閲覧することができます。このアーカイブを見ると、この頃から、会員から投稿された研究会やイベント情報などを、随時、ウェブで広報していたことがわかります。当時は、かなり新しいやり方であったと記憶しています。NACSISは、2000年4月に国立情報学研究所(NII)となりましたが、学会向けウェブサービスは継続されました。しかし、NII のサービスだとファイルを置けるだけで、近代的なウェブサーバの設置が難しいため、学会独自でのウェブサーバの設置が検討され始めました。そして、当時のネットワーク委員会のご尽力で、2006年3月に、www.jsiam.org として大阪大学に(物理的に)自前サーバを用意して運用を開始しました。その後、2014年から、JSIAM Online Magazine (JOM)の開始や年会・研究部会連合発表会のウェブや参加費徴収システムの運用のために、Amazonが提供するクラウドコンピューティングサービスであるAWSの利用を開始しました。学会公式ウェブの一部も、www2.jsiam.org としてAWSに移行され、この状態はつい最近まで続きましたが、2022年1月に、www.jsiam.orgはwww2.jsiam.orgに統合されました。

 

リニューアル決定と委託業者の選定

2021年7月に新会長に就任した秋葉博会長が示した、学会が早急に取り組むべき課題の一つに、学会公式ウェブの整備がありました。上述の通り、その当時まで、学会ウェブの技術的な管理とコンテンツの管理は、すべて、ネットワーク委員会が行なっておりました。しかし、セキュリティ対策など対応すべき事柄は、年々増加傾向にあり、技術的な管理をすべてネットワーク委員会のボランティアに頼るのは現実的な運用ではないと判断されました。そこで、学会ウェブの技術的な保守管理を外部の業者に委託すること、また、それを機に、学会ウェブのデザインも一新することが、理事会で決定されました。そのために、当時、新しく設置されたばかりの総務委員会の中にワーキンググループ(WG)を設置して準備にあたることになりました。メンバーは筆者(総務委員会委員長)、曽我部知広(副委員長)、相原研輔、内海晋弥、杉谷宜紀の5人です。

2021年10月に、ウェブの作成と保守管理を行える業社5社に見積もりを依頼し、10月から11月にかけてヒアリングを重ねました。最終的には、そのうち2社を候補として、再度、会長を含めた理事有志の数名でオンラインのヒアリングを行いました。結果、11月26日の理事会で、株式会社想隆社に委託をすることが決まりました。

委託の際には、www2.jsiam.orgのサイト構築で利用していたWordPressを利用して構築することを条件としました。また、コンテンツは、基本的にはその当時(2021年10月)のものを踏襲することにしました。しかし、長い年月をかけて、継ぎ足しを続けながら構築してきたものなので、構成が必ずしも最適とは言えず、これを機に、全体の整理を行うことにしました。しかし、それを実現するための具体的なヴィジョンがあったわけではなく、委託業社には、その目的のためのアドバイスも求めました。一方で、見積もりの際には、「これを作ってほしい」という具体的な注文が要求され、ヒアリングの際には話が噛み合わないことが多々ありました。もちろん、抽象的な依頼をしている筆者に責任があります。サイトの構成や仕様を学会で具体的に決定してから、見積もりを取った方が、費用も少なく抑えられたと思います。しかし、筆者は、単なるユーザでしかないWGの想像力の範囲内で事を進めた結果、最善でないものを購入してしまうことを危惧しました。実際、委託を依頼することにした想隆社は、学術機関でのウェブをはじめとするシステム開発で実績があり、見積もりを依頼した段階で、本学会のウェブの問題点と解決策を示すレポートを提示してくれ、いろいろと相談をしながらウェブを構築してくれるという安心感がもてました。また、セキュリティ対策についても説得力がありました。委託決定後、想隆社は、細かい相談を随時行いながら、作業を進め、3月に新ウェブが納品されました。そして試験運用期間を経て、2022年4月5日に現在の新ウェブが公開されました。なお、サーバは、引き続き、ネットワーク委員会が管理するAWSを利用しています。

jsiam-web
リニューアル後の学会ウェブhttps://jsiam.org

 

新ウェブについて

リニューアルの際に、もっとも注意したことは、学会ウェブは、学会に関係する人が、学会に関係する情報を容易に得られるものでなければならない、ということでした。また、現在会員でない人にとって、日本応用数理学会の活動のイメージが具体的に湧くようなもの、ということにも気を配りました。そのため、最新ニュースだけでなく、年会や研究部会連合発表会へのリンクをトップページのわかりやすい位置におきました。また、トップページのメインイメージをスライドして複数表示する形にして、需要の高い情報や学会としてぜひ見てほしい情報をメインイメージからリンクできるようにしました。現在(2022年10月20日)、メインイメージとしては、年会(2022年度)、研究部会連合発表会(2022年度)、ICIAM2023、JOMの案内、入会の案内、刊行物の案内の6つがあります。このメインイメージも専門のデザイナーに発注して作成してもらいました。

また、たとえば、研究部会の活動に対する学会からのサポートなど、いままで、個人的な連絡でしか伝わっていなかった情報も、ウェブで公開し、便宜をはかりました。『各種受付→総務関係』などをご覧ください。この『各種受付』のページは、委員会活動や研究部会活動をなさっている会員の皆様に有用な情報が多くあると思いますので、ぜひ、ご一読ください。

『会員と組織→委員会』のページには、(学会の規定に定められている)各委員会の歴代の委員の皆さんのお名前のリストを残しました。また、『会員と組織→役員・代表会員』のページには、歴代の会長、副会長、理事、評議員(2011年以前)、代表会員(2012年以降)のリストを公開しました。これは、これまで学会の運営にご尽力くださった方々に敬意を払い、その功績を後世に残す目的があります。実際、過去のリストを眺めると、実に、多くの方々が学会の発展に尽くされたことがわかります。

また、年会や研究部会連合発表会のウェブも、学会ウェブの中で、ランディングページ形式で作成してもらいました。結果、今後、実行委員会の皆さんが、「空欄に情報を入力していくだけ」で年会や研究部会連合発表会のウェブが運用できることになります。なお、1991年の第1回の年会以降全ての年会の予稿集を電子化(pdf化)しましたが、著者に無断でウェブ公開するわけにもいかず、総務委員会で保管しているだけになっています。良い活用方法があれば、ぜひご教示ください。

JOMも、今回、新ウェブに統一しました。実は、JOMは学会誌の記事編集システム(これもネットワーク委員会の作品)の一部として運用されていました。しかし、2021年冬から、学会誌の編集事務業務は国際文献社に委託されたため、記事編集システムは停止予定でした。過去の記事の移行も随時進めており、2022年12月には、全記事の移行が完了する予定です。その後、記事編集システムも役目を終えることになります。

 

今後の運用

2022年4月以降、本学会の公式ウェブは、技術的な保守管理を想隆社に委託し、学会はコンテンツの管理・更新のみを行なっています。作業がしやすいように、WordPress上でウェブを構築してもらったので、更新作業自体は、専門的な知識がなくても簡単にできます。

WGの3人の委員は、そのまま、総務委員会広報係となり、コンテンツの管理・更新を担当することになりました。2022年秋からは、岩崎悟、陰山真矢、川越大輔の3人が新たに広報係に加わり、委員6人体制で、コンテンツの管理・更新を行なっていきます。ネットワーク委員会には、これまで通り、ドメインの管理やAWSの管理(と学会公式ウェブ以外のウェブの管理など)を続けていただきます。

 

以上、学会ウェブのこれまでの経緯と、リニューアルの顛末を簡単に記しました。

学会ウェブについて、ご意見等ございましたら、総務委員会広報係secretary-public-ml _AT_ml.jsiam.orgまでお知らせください。