学術会合報告

日本応用数理学会 第17回 研究部会連合発表会 参加報告

2021年06月09日

新庄 雅斗

しんじょう まさと

同志社大学

2021年3月4日(木)、5日(金)の2日間で「日本応用数理学会第17回研究部会連合発表会」が開催されました。2005年の第1回から今回で17回目となる連合発表会は、当初は法政大学で開催する計画でしたが、感染拡大防止の観点から、オンラインという新しい形態で開かれることとなりました。オンライン開催となった連合発表会では、2日間で46セッションが設けられ、参加登録424名、講演申込174件とこれまでと遜色ない規模で執り行われました。以下に、連合発表会での運営や講演の様子について、ご報告いたします。

研究発表は、Web会議システムzoomを用いて、発表スライドを画面共有する形式で行われ、質疑については、適宜、聴講者がチャットに投稿する、あるいは、発表後にミュートを解除して発言する形が採用されました。感染症対策ありきで過ごしたこの1年で、発表者および聴講者の双方がオンラインでの発表環境に慣れたこともあってか、目立ったトラブルもなく、研究に関する議論が交わされておりました。連合発表会の前日に、オンライン講演のリハーサルの機会が準備されていたのも効果的であったと思います。これまでと変わらず、各セッションで最先端の研究成果報告がなされ、質疑応答も活発に行われており、2日間を通して大変に盛り上がっていた印象です。

連合発表会1日目の午後には特別講演が企画され、冒頭に中村佳正先生から「研究部会連合発表会のひとまわりを祝って」と題して、連合発表会発足の経緯やこれまでの歩みなどについて、ご講演がありました。今では、学生の対外発表や若手研究者の交流の場としても定着している連合発表会ですが、研究部会制度立ち上げ当時の雰囲気など、連合発表会について普段ではあまりお聞きすることのない、貴重なお話をしていただきました。続いて、梶原健司先生から「可積分系と幾何学的形状生成―「よい」方程式は「よい」形状を生成するか?―」、西成活裕先生から「可積分系研究の可能性」、薩摩順吉先生から「ファジーCAの解析」と題して、可積分系をキーワードに、分野を越えて楽しめる興味深い講演をしていただきました。元来、可積分系は古典力学の概念ですが、改めて、可積分系研究の発展とその広がりを感じることができました。

連合発表会2日目は、応用可積分系セッションを拝聴いたしました。応用可積分系セッションでは、常時50名ほどが参加しており、若手研究者や学生による講演も多くみられ、質疑応答も盛況でした。午前中は、セルオートマトンやmax-plus研究の話題が中心で、ファジーセルオートマトン研究の最前線や近傍差分系に対するmax-plus版の解挙動など、興味深く聞かせていただきました。セルオートマトンを多次元ベクトルで表現することでファジー化が可能になることや、数理モデルをmax-plus演算で捉えることで特別なパターンを描く初期条件が解析できるなど、モデルを多角的にみることの重要性を再認識することができました。午後は、社会情勢を踏まえた感染症モデルに関わる研究報告に始まり、ローレンツ系の離散化や血管新生モデルに対する数値シミュレーションなど、様々なモデルに対する離散系に関する講演がありました。特に、感染症モデルとして広く知られるSIRモデルの離散化や、ソリトン方程式に対する遅延化の話題は刺激的で、今後の可積分系研究の分野横断的な可能性を感じるご講演でした。

私は大学の研究室から連合発表会に参加しましたが、研究発表を聴講する分には、対面形式とオンライン形式とで、それほど差はないように感じました。「オンライン開催であったから、遠方から参加することができた」という先生方もいらっしゃったようで、この点はオンライン開催によるメリットの1つかと思います。

この度の連合発表会のオンライン開催におかれましては、お忙しい中、実行委員長の磯島伸先生をはじめ、実行委員会の先生方に大変ご尽力いただいたものと思います。閉会後に実施されたアンケート結果からも、満足度の高い連合発表会であったことが窺えます。この場を借りまして心より感謝申し上げます。