学術会合報告

2020年度 応用数学合同研究集会 参加報告

2021年04月21日

大野 航太

おおの こうた

北海道大学

2020年12月に行われた応用数学合同研究集会についてご報告します.本研究集会は12月18日(金)〜20日(日)にオンライン上で行われました.大変歴史のある研究集会ですが,その来歴は2019年度の同研究集会の記事にて岡本さんが纏めてくださっているので,そちらをご参照ください.

今回の研究集会で特筆すべきは,前述のとおりオンラインで行われたということでしょう.2020年度はコロナの影響で多くの学会・研究集会が中止,またはオンライン上での開催となったかと思います.しかしこの様なご時世だからこそ,色んなWebツールが発展・活用され,新しい形式でこれまでと同様な研究者同士の交流が試みられています.本研究集会でもWebツールが活用されて開催されたのでその様子をご紹介します.

講演者によるプレゼンテーションには「Zoom」が用いられました.Zoomなどを用いたWeb Seminar (Webinar) は以前から行われておりますが,このコロナ禍でより一般的なツールになっているので,詳細については割愛します.最近ではタイムキーパーの仕組みも工夫されており,よりこれまでと同じような感覚で発表を行えたと思います.

そしてもう一つ,「Spatial Chat」というWebツールが本研究集会では用いられていました.このSpatial Chatは仮想空間上でビデオチャットを行うことが出来るWebツールです.名前を登録してログインすると,主催者側が用意した仮想空間の教室 (もしくは宴会場とも言える) に入る事が出来ます.自分のアイコンをマウスのドラッグ操作で動かす事ができ,ログインしている他の参加者に近づくと,その近づいた参加者と会話することが出来ます.アイコンの距離が離れていると声が遠ざかるので,他の人同士の会話は聞こえなくなります.このシステムはまさに研究集会で入った教室で,休憩時間に友人や共同研究者と研究議論や他愛のない会話を楽しむ様子そのものです.私も他の研究集会において懇親会会場としてこのSpatial Chatを利用しましたが,参加している研究者の方々と個別に近くで話している様な感覚になりました.学会や研究集会においては自身の研究発表を行うことはもちろんのこと,他の研究者の方々と個別に研究議論をすることも一つの目的であると思います.このコロナ禍でもWeb上で行う事が出来るこのシステムは,とても画期的であると思いました.

以上の様なWebツールを工夫して用いることで,本研究集会は行われました.発表された内容については,毎年感じることですが「数学」というワードから多岐にわたる応用をなされた「応用数学」の研究発表が行われており,大変興味深いものでした.神戸大学の國谷紀良先生は感染症の数理モデルをコロナウイルスの流行へ応用した研究発表をされており,今まさに直面している社会現象に対して数学を応用した研究であると思い,感銘を受けました.

私自身,本研究集会には2014年度(当時M2)に初めて参加しました.そのあとは2016年度以降毎年参加している本研究集会ですが,今年は形式を変えながらも開催出来たこと,そして参加できた事をとても嬉しく思います.これは世話人を務めて頂いた先生方や学生,秘書の皆様のご尽力あっての事だと思い,感謝を述べたいと思います.

様々なWebツールによって仮想空間で対面できるようになったことは非常に便利で,昨今の情勢においては必要不可欠なものであると思います.しかしその便利さを感じつつも,以前の様に対面で学会発表を行ったり,直接会って食事をしながら研究議論や他愛のない話に花を咲かせたりする事が恋しくなっております.1日も早くコロナ禍が落ち着いて,また新しい世の中に変われることを切に願っております.