学術会合報告

EASIAM2019 参加報告

2019年09月09日

田中 智之

たなか ともゆき

名古屋大学/理化学研究所

2019年6月13日から6月16日まで、14th SIAM East Asian Section Conference 2019 (EASIAM2019)が中国武漢市における武漢大学で開催されました。本稿は、その国際会議の参加報告です。

武漢市は、中国の中部に位置し、長江が街の南北を流れています。会場の武漢大学は、中心地から少し離れた場所にあります。東湖と呼ばれる湖に面しており、建物から見える景色はとても綺麗でした。中国に滞在するのは私にとって初めての経験で、英語がほとんど通じないことに衝撃を受けました。特に、空港に到着してホテルに行こうとしたところ、地図が示す場所に着いてもホテルが見当たらず、ホテルに電話すると、電話を取った人は英語を話しませんでした。更に私が「Do you speak English?」と聞いたところ電話を切られてしまい、ショックを受けました。幸い私はホテルのすぐ近くにいたため、少し探したら無事に到着できましたが、これからの中国滞在を不安にさせる出来事となりました。一方で、ホテルの近くにあった食堂に行ったとき、店主が覚えたての英語でなんとか話そうとしてくれたことがあり、ほとんどコミュニケーションは成立しませんでしたが嬉しく思いました。

会議はPlenary talk、Invited talk、後述するSPP session、Mini-symposium talk、Contributed talkに分かれていました。昨年は東大で開催され全体の講演数が100を超えたようですが、今年は全体の講演数は70程度と少なくなりました。私は幸運にも、Student Paper Prize (SPP) sessionの講演者に選ばれました。この賞は、博士課程の学生あるいは学位取得後1年以内の若手研究者に贈られる論文賞で、申し込みのあった論文から3本が選ばれます。この時点でStudent Paper Prizeの受賞が決まり、更にその順位が会議のSPP sessionでの発表によって決まります。SPP sessionはPlenary talkとInvited talkを除くと会議の最初にあるセッションであり、私の順番は2番目でした。私は偏微分方程式の初期値問題の適切性など、理論的なことを研究していますが、会議の参加者の多くは偏微分方程式の数値解析を専門としていました。そのような参加者が多いことは事前に分かっていたつもりでしたが、やはり数値解析の専門家に、理論的な研究が面白いと思ってもらうための講演は、非常に難しいものでした。実際にconference dinnerの際に参加者の一人から「理論的な研究もいいけど、シミュレーションの結果を見たかった」というようなことを言われました。また、SPP sessionの他の二人も偏微分方程式の数値解析が専門でした。結果は、Qilong Zhai氏が1位、Xuelei Lin氏と私が2位タイとなりました。Qilong Zhai氏の講演は、スライドもよく考えられて作られていましたし、発表も練習の成果をうかがわせるもので、1位にふさわしいものであったと思います。少し分野が離れた立場から参加したこともあり、私にとって本会議は非常に実りある機会となりました。今後研究していく上で、「分野外の人に自分の研究内容をわかりやすく魅力的に伝える」能力は必要不可欠になってくると思いますが、EASIAM2019で私はそのヒントを得ることができたと思います。

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授賞式直後の写真です。(撮影:池田正弘氏)

最後に、武漢市の食事と観光について触れます。Conference dinnerでは、初めて見た料理がいくつか出ました。最も印象に残っているのはザリガニを茹でたものです。見た目は綺麗な赤色をしていましたが、私はそれらが川で動いている姿を想像してしまい、最初食べるのに抵抗がありました。しかし現地の人が美味しそうに食べているのを見て、食べてみることにしました。エビのような味で、川の臭みも特にありませんでした。また、お腹を壊すこともありませんでした。武漢市は有名な観光地というわけではありませんが、黄鶴楼という中国でも有名な塔があります。李白という中国の詩人が黄鶴楼で詩を詠んだことも有名です。黄鶴楼からは長江と街を一望することができました。

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conference dinnerで出たザリガニです。

次回はインドネシアのバリ島で開催されるようです。次回以降も積極的に参加し、自分自身の研究の幅を広げていこうと思います。