学術会合報告

ICIAM2019 参加報告

2020年04月24日

笠井 博則

かさい ひろのり

福島大学

2019年7月15日から19日までスペイン・バレンシアで開催されたICIAM2019(International Congress on Industrial and Applied Mathematics)に参加してきましたので報告をさせていただきます。ICIAMは4年に一度開催される応用数学最大の国際学会です。おおよそ応用数学と関連した分野は全部あるのではないかと思われるくらいの幅の広い学会で、前々回はカナダ・バンクーバー、前回は中国・北京、今回2019年はスペイン・バレンシアで開催され、次回2023年は東京・早稲田大で開催されます。参加者数約4000人、いくつものパラレルセッションがある学会で(一般講演・ミニシンポジウムでセッション数が約800以上!)、全体像をつかむのは無理でしたので、自分の目に触れた範囲での参加報告になりますが、お許しください。

alt="ICIAM2019メイン会場"
ICIAM2019メイン会場

参加申し込み:

ICIAMには個人参加が可能です。海外の研究者を巻き込んでオーガナイズドセッションを申し込むこともできますが、講演要旨を送った上で採択されれば一般講演やポスターセッションをすることもできます(当然、講演なしの参加も可能です)。私は、一般講演の枠で参加することにしました。

出発前の連絡:

登録するとICIAMの事務局からのメールが不定期に届きました。WebページとTwitterによる告知で情報を得られました。学会の開催の直前の時期に、開会式にスペイン国王のフェリペ6世陛下が臨席されることがメーリングリストなどで発表され(警備の都合で?)レジストレーションと開会式の会場が変更になると発表されました(新しい会場への交通ルートなどの情報がみつからないでこまりました・・・)。

旅は道連れ:

最初の乗り換え地、シャルル・ドゴール空港で千葉大の白川さん、群馬大の大塚さんと出会ったので、バレンシアまでご一緒することになりました。この出張中、白川さん、大塚さんとは、情報のやりとりや慣れない街を案内してもらうなどでいろいろお世話になりました。

レジストレーション・ウエルカムパーティー:

レジストレーションの会場の最寄りと思われる駅に行きましたが、そこから会場への道案内のスタッフは出ていませんでした。奇遇なことに白川さんと再び出会い、道に迷いつつウエルカムパーティーの開始時間の6時前にレジストレーションの会場に着きました。その時点でレジストレーションにはすでに長蛇の列ができていました。ウエルカムパーティーとレジストレーションの列のあるスペースには特に区分けがなく、ウエルカムパーティーの方にはおいしそうな料理と飲み物がありつつも、レジストレーションの前に料理を食べるのははばかられて、なかなか進まないレジストレーションの列に並び続けました。我々の場合、1時間半ほどかかりやっと受付が終わりましたが、そのころには、食事と飲み物はほとんどなくなっていました。その後、7時過ぎにレジストレーション会場に着いた方は、受付できたのが10時だったそうで、その時点でまだ長蛇の列があったとのことでした。

開会式:

朝、開会式会場に着くとまた長蛇の列。

警察官やらSPと思われる方々がたくさんいて、後ろめたいこともないのに緊張。列が長くつながっているので、なんとなくその列の後ろに並びましたが、しばらくたつと、レジストレーションが済んでいる人は会場に入れるという情報があり、レジストレーションが済んでいる人は会場の入り口に移動しました。空港ほどではないものの、警備の人に手荷物のチェックなどをされてから開会式のホールに入りました。

開会式は、国王陛下臨席のもと行われました。開会のあいさつ、アトラクション、ICIAMの各賞の表彰に続いて、国王陛下のスピーチがありました。「科学の能力に秀でた人を生み出し、集め、維持し、その人たちを仕事につなげていく(Generating, Attracting, Retaining Scientific talent and channeling to Job)ことが大切」などと述べられていました。競争社会は「Retaining」の意味で優しくないのかと思ったりしました(この講演の映像は、YouTubeのICIAM TVでみることができます)。

alt="開会式会場の行列"
開会式会場の行列

各種講演:

いくつかのPlenaryTalkから学会がはじまりました。会場のある建物が5,6個でセッションの部屋も膨大にあり、それらの移動には最大10分以上かかりました。招待講演のテーマも純粋な理論解析、流体計算の医学への応用、暗号理論、工学における最適化などと幅が広くおもしろそうな講演が並んでいました。一方で、一般講演とミニシンポジウムが平行にあったため聞きたい講演が同じ時間にあることも少なくなかったです。プログラムの作成は大きな問題かと思いました。

今回は、自分の講演のほかに座長を頼まれていました。オーガナイズドセッションを組めない人も参加できるのが、この学会の良いところだと思いますが、座長の決め方が難しいのも事実です。今回の一般講演の座長は、6人一組のセッションのうち、最初の人に依頼していたようです。残念だったことは、座長進行についてのサポートがなかったことです。タイムキーパーがいて、プログラムの紙が置いてあって、簡単な座長の心得が置いてあるくらいのことは期待していたのですが、会場係の学生が1名。廊下に複数名の学生がいただけでした。

今回、私が座長を頼まれていたセッション(Mathematical Topics and Their Applications III)では、一名講演のキャンセルがありました。このとき、キャンセル講演の次の講演者から「自分の順番を、キャンセル講演の時間にしたい」と申し出がありました。日本の学会だと、「キャンセル講演があっても基本プログラムの時間順守」なので、そのように伝えたのですが納得いただけなかったので、会場係の学生に「本部に問い合わせて」とお願いしたところ、「講演時間の半分を過ぎてこなかったら次を始めても良い」とのことでしたので、その旨伝えて納得してもらいました。と!納得してもらったところで、自分の講演時間(セッション開始時間)の時間。慌てて自分のPCとスライドを準備して、座長挨拶もなく、自分の講演に入りました(会場係がいればありがたかったところです)。

今回の学会では、プレゼンテーションのファイルを講演の1時間ほど前までに事前に登録するシステムでした。自分の講演の会場に行くと、講演者のプレゼンテーションファイルがWebから呼び出せるシステムになっていて、PCのつなぎ変えによる時間のロスを減らそうとする試みかと思いました。また、ファイルを登録していない時点で、講演のキャンセル?ということが事前にわかっていることはよかったかと思いましたが、半面、登録した動画が動かないなどの事例が多く、その場合はその場で自分のPCをつないで発表ということになっていました。

印象的だったこと(食事):

次回開催に関わることで、食事の話は大切かと思います。

お昼時に、(多少時間がずれるとはいえ)普段より多い4000人以上の人間が食事するのは大変です。今回のバレンシアでは、トラックの屋台が活躍していました。炎天下20分待ちでお昼を買うのは大変でした。なぜか、今回出来合いのお弁当の販売というのを見なかった気がします。これもおもてなしなのかなと思いますが。

バレンシアはパエリアの発祥の地とのことで、街中に行くとパエリアのお店がたくさん並んでいました。バレンシアのパエリアはチキンのパエリアとのことでした。

alt="バレンシアのチキンパエリア"
バレンシアのチキンパエリア

印象的だったこと(運営):

今回の運営で、印象的なことは、日程が進むにつれて運営が進化していたことでした。例えば、初日、2日目は各発表会場では、部屋の入口の脇に会場番号だけの掲示だったのですが、3日目からは各部屋の講演者名・タイトルの入った掲示に変更になっていました。また、会場の案内のスタッフの配置も、後半ほど迷いがちな場所(最初に行ったときに困ったところ)に多くなっていました(もしかしたら、3日目以降は座長の心得、キャンセル講演のあった場合の対処なども置かれていたかもしれません)。

印象的だったこと(ICIAM2023のブース):

先にも書きましたが、ICIAM2023の紹介ブースと次回開催のことは言わないといけないかと思います。次回のICIAMは東京・早稲田大学を中心に開催されます。その紹介ブースが会場にありました。東京の観光協会のスタッフの方が作ったブースはきれいに飾り付けられ、ICIAM2023の団扇、鶴が折れる折り紙を配っていました。

記念写真用のハッピと、手持ちの団扇があり、ICIAM2023の招致に関わった先生方の他に、日本から参加した若手の参加者のみなさんが、自分の講演・聴講の合間に自主的にブースの変更・参加者への声掛け、記念撮影のお手伝いをしていました。

鶴が折れるチラシは人気で、自分で座長をした部屋に20枚ほど置いておいたのですが最終的には売り切れました。

alt="ICIAM2023宣伝用折り鶴"
ICIAM2023宣伝用折り鶴
alt="ICIAM2023ブースでの写真"
ICIAM2023ブースでの写真

プチ観光:

マニセス焼と言われる焼物・タイルで有名なマニセスの街は、バレンシア空港とバレンシアの間にあります。街の通りにある飾りや、建物までがタイルで飾られていてきれいでした。日本に戻って気が付きましたが、バレンシアの地下鉄の駅は、(多分、マニセス焼の)タイルで飾られていました。

alt="マニセスの街の観光案内所"
マニセスの街の観光案内所

謝辞:

今回の学会参加では、福島大学の海外発表の補助(5万円)と公募研究の補助(10万円)を頂きました。また、現地では多くの日本からの参加者のみなさんにお世話になりました。特に、千葉大・教育学部の白川先生と群馬大・工学部の大塚先生には、街に慣れるまでの間やレジストレーション・開会式などで(約束していなかったにも関わらず)一緒に行動していただくなど、大変助かりました。別して御礼申し上げます。