学術会合報告

2018 Annual Meeting of the Society for Mathematical Biology & the Japanese Society for Mathematical Biology 参加報告

2018年12月11日

江夏 洋一

えなつ よういち

東京理科大学 理学部

2018年7月8日から12日にかけて、オーストラリアのシドニー大学で開催された学会「2018 Annual Meeting of the Society for Mathematical Biology & the Japanese Society for Mathematical Biology」に参加しました。

帰国を挟まずに複数の国際会議に参加したのは今回が初めてで、シドニーへ到着する前は、2018年7月5日から7日にかけて開催された「The 12th AIMS Conference on Dynamical Systems, Differential Equations and Applications」参加のために、台北に滞在していました。南半球での滞在も初めてで、太陽が雲に隠れるときは日中でも10度前後となり、厚手のジャケットを着ていても肌寒く、避暑地ともまた違った新鮮な気分でした。

本学会は、アメリカを中心とした数理生物学の国際組織 Society for Mathematical Biology (SMB) と日本数理生物学会 Japanese Society for Mathematical Biology (JSMB) との合同大会であり、30前後のオーガナイズドセッションが展開される会場の規模に圧倒されました。その中で、私自身は「Predator-prey, competition, extinction」にて、被食者が捕食されてから捕食者の個体数増減に反映されるまでのタイムラグを考慮した被食者・捕食者モデルにおける解の漸近挙動に関する口頭講演を行いました。具体的には、タイムラグを含む Wangersky-Cunningham model において、捕食項を非線形関数に拡張した方程式系がもつ、共存平衡点の Hopf 分岐によって現れる周期軌道について発表しました。質疑応答やセッションが終わった後も、会場内の多くの研究者が声をかけてくださり、数値計算から示唆される共存平衡点の安定性に関する予想や、中間種を含めた3種系におけるリミットサイクルが現れるための条件など、多くの課題に関心を寄せてくれたことが嬉しく、貴重な経験となりました。他のセッション会場でも、感染症の流行や腫瘍の浸潤を記述する微分方程式系やネットワークモデルなどの幅広い力学系に関する興味深い話題が多く、建物内ではディズニーランドのアトラクションを熱心に巡るかの如く教室間を右往左往していたことが今でも思い出されます。

12日までの学会を終えた翌日は、ランチを兼ねた市内の観光として、ダウンタウン内のホテルから徒歩20分ほどのシドニーフィッシュマーケットを訪れました。いかにも白ワインに合いそうな新鮮で大きな牡蠣やロブスター料理に舌鼓を打ち、場内を見回しただけでもシドニー市内で流通する魚介類のほぼ全てがこの市場を経由することに違和感がないほどの広さでした。

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オペラハウスの外観

その後は、2007年に世界遺産となったオペラハウス(上図、筆者撮影)にも足を運びました。残念ながら平日ともあって入館は叶わずでしたが、180度は見渡せるポート・ジャクソン湾の潮風を浴びながら周囲の方と世間話をしていると、ライトアップされた夜景も素敵、ということで次の機会にぜひ見てみたくなりました。

シドニーという場所で数理生物学を専門とする多くの海外の研究者と直接ふれあえたことに感謝し、研究への意欲を今後も高めていきたいと思います。

最後に、このような貴重な機会をいただきました日本応用数理学会編集委員会に厚く御礼申し上げます。