学術会合報告
日本応用数理学会2018年度年会報告
2018年12月11日
畔上 秀幸
あぜがみ ひでゆき
名古屋大学 大学院情報学研究科
2018年9月3日から5日までの3日間にわたり,日本応用数理学会2018年度年会が名古屋大学東山キャンパスを会場にして開催されました.4日午後には,猛烈な勢力の台風21号による暴風雨に見舞われましたが,参加者は暴風前に午後の会場である豊田講堂に入り,懇親会後には暴風が収まったという幸運に恵まれ,何とか予定通り執り行うことができました.会長をはじめ理事会執行部の皆様には当日まで様々な可能性について一緒にご検討いただきありがとうございました.この台風の襲来により,参加できなくなった皆様にはプログラムの変更が叶わなったことをご容赦ください.ご参加いただいた皆様には活発な討論でセッションを盛り上げていただき,例年どおりの盛会に導いていただいたことに対して深く感謝いたします.
参加者数は515名で,昨年の歴代最高に5名足りませんでしたが,東京を除く年会では最大でした.研究部会OS 41セッション,正会員主催OS 18セッション,一般講演11セッションに加えて,ポスター講演27件でした.ポスターの件数が昨年には及びませんでしたが,OSの数はこれまでで最大であったと思います.特に,会長はじめ,たくさんの正会員の皆様が積極的にOSを主催していただいたことが印象に残ります.さらに,前回に続き,今回も講習会「FreeFem++での開発と利用」や若手/女性研究者にとっての情報交換の場としての「キャリアデザインのためのランチミーティング」が開催され,学びや交流の場となっていました.
2日目午後は,会場を豊田講堂に移して次のようなイベントが行われました.最初に,ポスターセッションがあり,参加者の投票により,最優秀ポスター賞1件と優秀ポスター賞4件が決まりました.賞状は懇親会の中で会長より手渡されました.今回の受賞者は女性3名となり,会長より,男子頑張れとの応援がありました.総合講演では,日本数学会との交流イベントとして,名古屋大学の松本耕二氏による「ゼータ関数の普遍性について」と題したご講演があり,最新の成果を交えた整数論の奥深い世界に触れる機会を持つことができました.また,実行委員会企画の総合講演として,豊田中央研究所所長の菊池昇氏による「応用数理としての風が吹けば桶屋が儲かる」と題したご講演がありました.この講演では,講師がこれまで遭遇した様々な問題に対して,数理的な視点がどのように役に立ち,また不満であったかが実例を挙げて語られ,数理の役割について再考する機会を与えていただきました.その後,休憩をはさんでホワイエで懇親会が行われ,招待者を含め147名の参加がありました.冒頭,実行委員長,村瀬洋情報学研究科長,会長の挨拶があり,中ほどで日本計算工学会の山田貴博会長より両学会の交流促進策が披露され,最後に次回開催地である東京大学の時弘哲治先生から抱負が述べられました.今回は地酒コーナーが設けられ,予想されたとおり左党のたまり場ができました.
ここから,今回の年会開催に至るまでの準備の様子とご尽力いただいた方々をご紹介したいと思います.2年前の秋,筆者は副会長(理事会執行部の一人)として2018年度年会の開催地を選ぶ責務を負いました.過去の開催地を調べたところ,東海地区での開催は1997年まで遡ることがわかりました.このとき,腹をくくるしかないなと悟りました.筆者の研究室は小規模ですが,幸いにして,名古屋大学には張紹良教授と片桐孝洋教授の研究室があり,近隣の大学や高専および企業にも有力なメンバーを思い浮かべることができたことが受諾の決め手になりました.最初に筆者がしたことは,張先生と片桐先生に筆者が加わる形の3人体制で実施することのご了解を両先生からいただくことでした.お二人とも日本応用数理学会には深い思い入れがあり,快諾していただきました.
それから,お二人と相談の上,実行委員を依頼し,2017年10月26日に第1回実行委員会を開催しました.その後,主な会合として,実行委員会を2回(2018年1月と7月),会場担当の会合を1回(4月)開催しました.片桐先生には,総務として諸々の問い合わせへの対応からプログラムの作成に至るまで,全体的な作業の管理をしていただき感謝します.山中脩也先生(明星大学)にはウェブシステムの管理運用と受付からプログラムの公開まで多大なご尽力をいただきました.名古屋大学の曽我部知広先生,剱持智哉先生,宮武勇登先生(現大阪大学),荻野正雄先生,松本敏郎先生,杉山雄規先生には会計から会場に関する責務を担っていただきました.代田健二先生(愛知県立大学),片峯英次先生(岐阜工業高等専門学校),堀之内成明様(豊田中央研究所),村井大介様(豊田中央研究所),小藤俊幸先生(南山大学)には,企業展示・広告,実行委員会企画および一般講演に関するお世話をしていただきました.ここに感謝の意を表します.