学術会合報告

CJK2018: The Seventh China-Japan-Korea Joint Conference on Numerical Mathematics開催報告

2018年10月20日

齊藤 宣一

さいとう のりかず

東京大学大学院数理科学研究科

2018年8月20日から25日の間,しいのき迎賓館(石川県金沢市)にて,第7回日中韓数値数学合同カンファレンス(CJK2018: The Seventh China-Japan-Korea Joint Conference on Numerical Mathematics)が開催されました.このカンファレンスは, 各国が持ち回りでホストを務める形で2年毎に開催されてます.これまでの経緯については,すでに,別の記事(JOM #G1609)で詳しいことを述べました.

alt="CJK2018の集合写真"
CJK2018(しいのき迎賓館の正面入り口にて)

今回からの大きな変化としては,中国側の組織委員長が,Z. C. Shi教授(中国科学院)からZ. Xie教授(湖南師範大学)に,日本側の組織委員長が,岡本久教授(学習院大学)から齊藤に交代したことが挙げられます.なお,韓国側の組織委員長は,第1回から連続で,D. Sheen教授(ソウル国立大学)が務めました.

このカンファレンスでは,各国から7名の招待講演者が推薦され,この計21名の招待講演がプログラムの中心となります.そのほかに,一般講演(時間は短いがこれも招待講演)が,ホストの裁量で設定されます.今回は,中韓から1名ずつ,日本からは8名が一般講演を行いました.中国からの招待講演者は,研究者として脂がのった40代の方々が中心で,内容も,非線形偏微分方程式の多重解の数値解析や構造保存解法など,様々でした.韓国からは,Sheen教授,Y. Jeon教授(亜洲大学),J. H. Pyo教授(江原国立大学)などの常連に加えて,若い准教授やポスドクも参加しました.機械学習をアダプティブ・アルゴリズムの構成に応用するなど,野心的な講演もありました.日本からの招待講演者は,最年長でも40歳程度で,フレッシュさをアピールできました.もちろん研究内容についても,対象(Navier-Stokes方程式,確率偏微分方程式など)・方法(有限要素法,選点法など)・目的(科学技術計算,誤差解析,計算機援用証明など)のどれに着目しても,多岐にわたり,質の高いものであったと思います.また,日本からの一般講演者(から岡本教授と齊藤を除いた)6名は,さらに若く,かつ研究内容・講演技術ともに招待講演に引けを取らない質の高いもので,日本における数値解析の将来を大いに期待させるものでした.一方で,全体的に,線形計算や最適化などの数値解析の中心的な話題が少なかったようです.これは,各国の組織委員長の専門分野を考えると,仕方のないことかもしれませんが,プログラムを編成する上では,今後,注意を要すると感じました.

カンファレンス2日目の夜には,しいのき迎賓館のすぐ近くにある,金沢21世紀美術館内のレストランFusion21にて,レセプション(懇親会)が開かれました.今回のカンファレンスには,China-Japan-Korea Joint Conference on Numerical Mathematicsの前身の一つであるChina-Japan Joint Conference on Numerical Mathematicsの創始者の一人である藤田宏教授(東京大学名誉教授)も参加されており,乾杯の音頭とともに,日中韓の学術交流に関する思い出話などをしていただきました.また,L. Dengさんから,藤田先生の90歳のお誕生日(2018年12月7日)をお祝いする花束が送られました.なお,Dengさんは,特別招待講演者として(第1回から今回まで毎回)招待されているC. Douglas教授 (University of Wyoming)のご夫人であり,ご自身も研究者として,このカンファレンスで何度も講演をされています.

alt="Dengさんと藤田宏先生"
Dengさん(ご子息のGeorge君)と藤田宏先生

今回,日本側の組織委員長は,私,齊藤が務めましたが,カンファレンス開催に関わるほとんど全てのこと,会場,ホテル,お茶,懇親会,エクスカーションの手配などは,すべて,野津裕史准教授(金沢大学)が,引き受けてくれました.野津さんのご尽力のお陰で,カンファレンスを盛況のうちに終えることができました.改めて御礼申し上げます.

次回(第8回)は,2年後の2020年に中国で開かれる予定です.