学術会合報告
2016年度応用数学合同研究集会 参加報告
2017年04月19日
宇田 智紀
うだ ともき
京都大学
京都大学大学院理学研究科・博士課程3回生の宇田智紀です.昨年末に龍谷大学にて開かれた応用数学合同研究集会についてご報告いたします.
応用数学合同研究集会は,(私が調べた限りでは)四半世紀前まで京都大学数理解析研究所において開催され,1994年度からは龍谷大学にて開かれてきた,応用数学分野の歴史ある研究集会です.2016年度も龍谷大学瀬田キャンパスで12月15日(木)〜17日(土)の三日間開催されました.特に2013年度からは,日本数学会応用数学分科会による応用数学研究奨励賞が設置されたこともあり,若手研究者が成果を発表できる研究集会としての期待がますます高まっているように感じます.このように,大学院生を含む若手研究者が数多く参加・発表していることも特徴的で,応用数学の未来を担っていく人々の活気と熱気で溢れています.その勢いは衰えるところを知らず,今年度も解析系は51件,離散系は44件もの講演が行われました.
私が初めてこの研究集会に参加したのは修士課程2回生のときで,そのとき色々と刺激をうけたことは今でも鮮明に覚えています.様々な分野,様々な世代の研究者の発表を聞いて交流できるこの研究集会は貴重な場ですし,以来毎年参加しています.余談ですが,私が初めて参加したときは瀬田キャンパスがどこにあるのか分かっておらず,前日に調べるまで京都市内から適当なバスに乗ればすぐ会場に辿りつけるのだろうと勘違いしていました(ちなみに京都大学吉田キャンパスから滋賀県内の龍谷大学瀬田キャンパスまで一時間半くらいかかります).瀬田キャンパスはJR瀬田駅から帝産バスで約10分の位置にあり,平日朝などは大勢の大学生の通学ラッシュに混じって向かうことになります.また,解析系の会場は6号館1階,離散系の会場は1号館6階と離れた位置にある点にも注意が必要です.
さて,今回は応用数学合同研究集会にとって一つの大きな節目であったように思います.まず,世話人の先生方が数年ぶりに引き継がれ,今年度は新しい体制での運営となりました.私も小規模なセミナーの運営経験ならありますが,ここまでの規模となると比べ物にならない労力と時間を要することと思います.素晴らしい研究集会を無事に成功に導いた世話人の先生方ならびに関係者の皆様には感謝してもしきれません.
次に,前回まであった解析系・離散系の合同セッションが今回は中止となってしまったことが挙げられます.実は前回もそうだったのですが,解析系は申し込み数が多いため締め切り前に募集を打ち切らざるを得ない事態となっています.今回は合同セッションを中止したことで可能な限り多く枠数を確保した形ですが,それでも何名かの講演希望者の申し込みを断らざるを得なかったようです.私は主に解析系の方に参加していますが,個人的には離散系の研究の方にも興味はありますし,合同セッションがなくなってしまったことは少し残念に感じました.解析系・離散系の合同研究集会としての側面と若手研究者が発表する機会としての側面,二つを天秤にかけた上での今回のスケジュールでしたが,次回はどうなるでしょうか.
節目といえば,合同の懇親会では一松信先生からのご挨拶が恒例となっておりますが,先生は昨年で90歳になられたとのことです.一松先生の『数値解析』(朝倉書店)を学部生時代に読んで勉強したことがいま応用数学の道へと進むきっかけの一つとなったこともあり,そんな先生が今でもこの研究集会に参加なさっているということは非常に感慨深いものがあります.たいへん熱心に講演をお聞きになられる先生をお見かけすることができるだけで,私も頑張って研究していかなければならないという気持ちになりとても励みになります.やはりこの研究集会の魅力は,世代や分野の垣根を越えた様々な研究者が一堂に会し,新たな出会いと発見が生まれるところだと感じます.
応用数学合同研究集会は,修士課程の学生から応用数学を代表する大先生方まで,多種多様な人々が集まり身近に交流することのできる活気に溢れた研究集会です.私自身も,これから応用数学合同研究集会が素晴らしい研究集会として続いていくことを切に願います.