学術会合報告
SCAN’2016参加報告
2016年12月18日
柳澤 優香
やなぎさわ ゆうか
早稲田大学 理工学研究所
2016年9月26日から29日,スウェーデンのウプサラ市にて開催された,精度保証付き数値計算に関する国際会議SCAN’2016 (the 17th International Symposium on Scientific Computing, Computer Arithmetics and Verified Numerics)に初めて参加しました.以下に会議の様子や個人的な感想を述べさせていただきます.
開催地であるウプサラ市は,北欧最古の大学であるウプサラ大学(1477年創立)と市街地の中心部にそびえ立つ大聖堂(写真1)をシンボルとした町です.ストックホルム・アーランダ空港から電車でたったの20分で着きます.講演会場は,Norrland’s Nation(写真2)というウプサラではOld houseとして知られている歴史ある建物で,ウプサラ駅から歩いて5, 6分でした.駅前の繁華街にはおしゃれなカフェ,雑貨ショップ,マーケットが並び,学会のランチタイム中にふらっと外に出て観光をしたり,買い物をすることができる便利な場所でした.
SCAN’2016における参加者は69名(内, 日本からの参加者は23名)で,9時と13時からそれぞれ1時間,Plenary sessionが設けられ,その他の時間は一般講演(63件)が行なわれました.二つの一般セッションが並行するプログラムで,それぞれの講演室はお互いの発表者の声が少し聞こえるくらいの近さだったのでセッション間の移動はスムーズにできました.
私は初日の「Linear algebra」セッションでの発表でした.不慣れな英語での発表の不安に加え,時差ぼけによる寝不足も重なり,緊張し過ぎて声が小さくなってしまいました.もっと積極的に国際会議に出席してたくさん経験を積まなければと強く感じました.
私の発表は初日に終了したため,残りの三日間は聴講者としてセッションに参加しました. 特に印象に残った講演としては,Rump先生による区間演算の起源(写真3)や,Julia言語を用いた「Validated Numerics. jl」という区間演算(四則演算や数学関数など)により厳密な計算結果が得られるパッケージの紹介や,四倍精度演算に対する厳密な誤差評価などです.詳しくはプログラム(http://www.math.uu.se/scan2016/program/)をご覧ください.多倍長計算の実装方法や誤差評価に関する発表の件数が多かったように思います。近年の計算機の発展に伴い解ける問題のサイズが大きくなったことで、四倍精度などの高精度演算の利用ニーズが世界的に高まってきているのだなと思いました。興味深い講演がたくさんあり,大変勉強になりました.
エクスカーションでは,ウプサラ市街地からバスで15分ほどのガムラ・ウプサラ(ガムラは北欧の言葉でOldを意味)に行きました.この集落が4〜6世紀にかけてスウェーデンの中心であったと言われていて,写真4の連なった小高い山は当時のスウェーデン王たちのお墓です.古墳に登ると,ウプサラ平原が果てしなく続く風景を見ることができました.とても素敵でした.
バンケットでは,スウェーデンの伝統料理であるコッド(タラ)をいただきました。特にデザートのチョコレートとブルーベリーアイスがとっても美味しかったです。バンケットの終盤に次回のSCAN’2018の講演会場となる日本の紹介を行いました.SCAN’2018の実行委員長である大石先生のプレゼンテーション(写真5)の後,Rump先生も日本の素晴らしさをアピールしました.
以上,初参加で緊張しましたが,何とか無事に発表を終え,帰国できました.最後に,私たちに対して非常に親切にサポートしてくださったオーガナイザーのウプサラ大学Tucker先生に感謝の意を表したいと思います.ありがとうございました.そして,二年後のSCAN’2018では多くの皆さまのご参加をお待ちしております.