学術会合報告

ILAS2016 参加報告

2016年10月26日

赤岩 香苗

あかいわ かなえ

京都産業大学 コンピュータ理工学部

2016年7月11日〜15日の5日間、ベルギーのルーヴェン (Leuven) にあるルーヴェン・カトリック大学 (Katholieke Universities Leuven, KU Leuven)にて20th Conference of the International Linear Algebra Society (ILAS2016) が開催された。最寄りのルーヴェン駅は、ブリュッセル国際空港から電車で約15分であり便利な立地であった。
ルーヴェンの街は市庁舎や教会など歴史的な建造物が多く、会場となったルーヴェン・カトリック大学は700年の歴史をもつそうだ。市中には大学が多く、アパートメントの前に並ぶ自転車は学生街ならではの風景かもしれない。
今回のILAS2016は、Plenary Lecture 9件、Mini Symposium 32セッション、Contributed talk 20セッションで構成されており、400件近くの講演がパラレルで行われた。プログラムの詳細は会議ホームページに委ねることにして、会議名の通り線形代数を軸として、数値解析から行列理論、グラフ理論までバラエティに富んだ内容であった。
著者は最近、totally nonnegative (TN) 行列の逆固有値問題に取り組んでおり、幸運にもtotal positivityのMini Symposiumで講演をする機会をいただいた。講演後、オーガナイザーであるレジャイナ大学 (University of Regina) のFallat教授やコンスタンツ工科経済造形大学 (Hochschule Konstanz Technik, Wirtschaft und Gestaltung, HTWG Konstanz) のGarloff教授の研究グループから有益な情報をいただくことができ、著者にとって大変有意義な会議となった。
同セッションでは、TN行列の固有値計算法で知られるサンノゼ州立大学 (San Jose State University) のKoev教授などの講演もあったが、中でも、サハンド工科大学 (Sahand University of Technology) のGhanbari教授による講演が興味深かった。連続可積分系であるToda flowの拡張として階段行列と対応する連続力学系を考えると、その系が時間発展において行列のTN性を保存する、という内容であった。他のMini Symposiumでは、グラフに対する逆固有値問題など、日本では聞くことのできない話題に触れることができたのも収穫であった。
また、ILAS2016ではソーシャルパックが非常に充実しており、ウェルカムパーティやカンファレンスディナー、エクスカーションの他に、フレンチフライやBBQなどのランチも提供された。世界遺産であるベギン会大修道院跡 (Groot Begijnhof) に隣接しているFaculty Club Leuvenで行われたカンファレンスディナーでは、ルーヴァン・カトリック大学 (Université catholique de Louvain) のVan Dooren教授のHans Schnizer Prize 授賞式が行われた。授賞式後、ワシントン州立大学 (Washington State University) のWatkins教授のスピーチが30分程続き笑いが起きるなど和やかなひとときを過ごした。

alt="カンファレンスディナーの様子"
カンファレンスディナーの様子

次回のILAS2017は2017年7月24日から28日までアメリカのアイオワ州立大学 (Iowa State University)で開催予定である。今回は滞在中にフランスでテロ事件が発生し緊張が走った。次回以降のILASが平和に開催されることを願ってやまない。