学術会合報告

The 11th AIMS Conference on Dynamical Systems 参加報告,学生論文コンテストにて最優秀賞受賞

2016年09月16日

田中 吉太郎

たなか よしたろう

北海道大学大学院理学研究院

先日開催されたThe 11th AIMS Conference on Dynamical Systems, Differential Equations and ApplicationsのStudent Paper Competition(以下,学生論文コンテスト)にて最優秀賞(First Place)を受賞した.今回はこのAIMS Conferenceについて,特に学生論文コンテストを中心に参加報告を記す.
第11回目のAIMS Conferenceは2016年7月1日から7月5日の間でアメリカのオーランドのHyatt Regency Orlandoというホテルで開催された.AIMS Conferenceは微分方程式やダイナミクスがテーマの学会である.10の基調講演と123ものセッションがあり,とても規模の大きい学会であった.基調講演では,Wei-Ming Ni教授が,ある空間内での生物の競争による共存と多様性について,拡張されたLotka-Volterra方程式の解析から論じられていて,とても面白かった.
私が参加した学生論文コンテストは,今回で2回目の開催となる.2016年3月にA4版で5ページ以内の論文の提出があり,私はその論文の審査によって10名のうちのファイナリストとして選ばれた.ファイナリストは特別セッションに招待され,発表する機会が与えられた.その発表によって,1位から3位までの賞が決められる.選抜されたファイナリストは,インドから1名,アメリカから4名,イギリスから1名,ブラジルから1名,日本から2名,中国から1名という顔ぶれであった.与えられた発表時間は一人20分で,10分は質疑応答であった.
私は2年前に行われた前回の学生論文コンテストにおいてもファイナリストに選出されていたので,今回で2回目の参加となった.私はこの3月に学位を取得していたので,最後のチャンスだという思いで,できる限り一人で発表練習を行い,質疑応答用のスライドも用意して本番に臨んだ.
論文コンテストのセッションは2日目に行われた.審査員の先生は5名いらっしゃった.その中には,基調講演をされたWei-Ming Ni教授がおられて緊張が走った.偏微分方程式の専門家である先生が大半を占められていた.質疑応答では,先生方はどの学生に対しても,大変鋭い質問をされていたので,セッションには緊張感が漂っていた.私は合成積によって特徴づけられる非局所発展方程式と反応拡散系の関係性について発表を行った.質疑応答では全ての審査員の先生に質問されたが,質問用のスライドが役立ち,きちんと受け答えができたと思う.名だたる先生方に自身の発表を聞いていただき,それに関する質問をされ,それに答えるというやりとりは私にとってはとても貴重であり,とても良い経験となった.
ファイナリスト10名は3日目の夜に行われた懇親会に招待された.そこで学生論文コンテストの表彰式が行われた.表彰式が始まるまでの間,テーブル席で他のファイナリスト達と様々な話をした.出身国や出身大学の話,恋愛の話,研究や卒業に関する悩みを聞いた.グローバルな交流と同時に,彼らの考えや悩みなどに触れて,もっと自分も頑張ろうと思った.表彰式は懇親会の最後に行われた.ファイナリストが一人ずつ名前を呼ばれ,舞台に一人ずつ上がっていった.これだけでもとても名誉な気分になった.結果的に,First Placeの名前で私の名前が呼ばれたときは,現実味がなかった.会場中の人から拍手をされ,ただただお辞儀をするばかりであった.知り合いの先生や私の指導教員である二宮広和教授からもおめでとうと祝福され,博士後期課程の研究がこのような形で評価されて,とても嬉しく,このときばかりは報われた思いであった.この表彰式にて,第2回目のAIMSの学生論文コンテストは終了した.
日本の微分方程式やその応用,ダイナミクスを研究されている学生の方には,ぜひ,この論文コンテストに応募することをお勧めしたい.日本ひいては世界の同世代の研究者と知り合いになれるし,彼らと交流することはとても貴重なことであると思う.また,英語での発表もさることながら,その後の質疑応答もとても良い経験になると思う.世界的に有名な先生方から一斉に英語で質問される経験は,なかなかどうしてExcitingであった.次回は2018年に台湾の台北で行われることが決まっている.次回も日本の学生がこのセッションを盛り上げてほしいと願う.
結びに,この光栄な賞を受賞できたことに関して,共同研究者の山本宏子博士(明治大学研究・知財戦略機構)と二宮広和教授(明治大学総合数理学部),旅費を支援してくださった栄伸一郎教授(北海道大学理学研究院,JST CREST)に感謝を申し上げたい.