学術会合報告
「産業における応用数理研究部会」セミナー:FreeFEM++で学ぶ現象と数理 開催報告
2015年09月11日
井手 貴範
いで たかのり
アイシン・エィ・ダブリュ株式会社
2015年2月18日(水),19日(木)に筑波大学東京キャンパス文京校舎にておいて開催された表記講習会について報告する。 (http://na.cs.tsukuba.ac.jp/acmi/?p=346) FreeFEM++ はパリ第6大学J.L.Lions研究所のPirronneau教授,Hecht教授が中心となって開発しているフリーの有限要素解析ソフトである。 (http://www.freefem.org/ff++/)
講師はFreeFEM++の開発者の1人である大塚厚二氏(広島国際学院大学)が務め,参加者は22名(企業からの参加者が半数)であった。
講習会のプログラムは以下の通りである。
2月18日(水) FreeFEM++の紹介と有限要素法の基礎,FreeFEM++の実習
2月19日(木)連続体力学の理論と有限要素計算(固体・流体),FreeFEM++の高度な利用
講習会の内容は本学会が監修している[1] に沿った内容であり,PCによる実習も含まれていた。
2月18日はFreeFEM++の概要説明から始まった。開発者自身による講習会ということで,参加者は開発の背景を直接聞くことが出来た。 背景を知ることはソフトウエアの操作習得には大変役にたつ。次に有限要素法の有名な例題であるリングに張る石鹸膜の問題(Laplace方程式)を弱形式化し, 離散化する説明が行われた。そして,実際にFreeFEM++による数値実験を行い,可視化まで行った。 また、FreeFEM++によって作成された行列の出力方法も学んだ。 2月19日はFreeFEM++による特性曲線法による流体の有限要素解析,並列化に適した領域分割法,形状最適化問題,アダプティブメッシュ法など 最新の研究成果も紹介があった。これらの内容は企業の開発に携わる技術者にとって大変有益な情報であったと思われる。
本講習会は理論とソフトウエアによる実践のバランスが大変良く本学会の特色が出ていた。 通常の有限要素法の講習会はソフトウエアの操作習得が中心であり,理論については説明がない場合が多い。 企業において有限要素法のソフトウエアを用いて実務を行ってる技術者が有限要素法の理論を習得しているとは限らない。 また理論を習得したいと思っていても学習する機会は少ない。有限要素法を独学で身に付けようとしても時間もかかる。 このような悩みを持つ本講習会の参加者は大変効率的に有限要素法を学習できたと思う。講習会当日にはサンプルプログラムも提供された。 講習会で興味をもった参加者はサンプルプログラムを用いて自習も出来る点は大変良いと感じた。
第2回は2016年2月ごろ開催予定である。本講習会は企業において有限要素法の理論を知りたいと思ってる技術者, これから有限要素法を勉強し数値実験を行い結果を可視化したいと思っている学生にとって最適な講習会である。 興味を持たれた方は是非とも参加を検討されたい。
[1] 大塚・高石著「FreeFEM++で学ぶ現象と数理 -FreeFEM++数理思考プログラミング」