学術会合報告

2015年度応用数学合同研究集会参加報告

2016年03月21日

後藤田 剛

ごとうだ たけし

京都大学大学院 理学研究科

2015年12月17日(木)から12月19日(土)にかけて, 龍谷大学瀬田キャンパスにおいて2015年度応用数学合同研究集会が行われた. 私自身, 昨年度初めてこの研究集会に参加し, 今回が2度目である. 私の研究分野は数理流体力学であり, 数学解析が中心ではあるが, モチベーションが物理現象にあり, 今後数値計算にも積極的に取り組んでいきたいという思いから, 応用数学の研究集会を中心に参加している. 前回の講演の際は, 大勢の前での発表が初めてということもあり, 緊張のあまり思い通りの講演ができず気づけば終わっていたというような感じであったが, 今回の講演ではいくぶんか落ち着いて発表できたことにホッとしている.

本研究集会は「離散系」と「解析系」の2つのセッションがパラレルに進行し,  2日目の夕方からは「合同セッション」と呼ばれる, 離散系・解析系それぞれの招待講演者2名による講演が行われる. 本年度は離散系で38件, 解析系で43件の講演が行われた. 申し込み件数は年々増加しており, 今回の解析系に関しては講演申し込みの締め切り前日にはもう講演枠が埋まってしまい, その後の申し込みは断らざるを得なかったほどの大盛況であった. この研究集会の特色としては, 発表者に大学院生を含めた若手研究者が多いことが挙げられる. また, 2013年度から日本数学会応用数学研究奨励賞が創設されたことも若手研究者の研究集会に対するモチベーションを高めている. 一方で日本の応用数学を牽引する先生方も多く参加されており, 私にとってこの研究集会での発表は特有の緊張感を感じる.

本年度の合同セッションでは, 離散系からは日本大学の斎藤明氏による「有限集合を生成する禁止部分グラフー禁止しすぎに注意しましょうー」, 解析系からは京都大学の坂上貴之氏による「二次元非圧縮流れの流線トポロジーの分類:連続流れに潜む離散構造」の講演が行われた. 斎藤氏の講演はユーモアあふれる語り口で親しみやすく, あまりグラフ理論になじみのない私にとってもわかりやすく, 楽しんで聞くことができた. 坂上氏の講演は, 流れ現象に語表現を与え, その表現の持つ文法で流体運動の遷移を理解するという内容であり, 専門外の方々も真剣に講演を聞き入っている様子が印象的であった.

合同セッション後には毎年恒例の離散・解析系合同の懇親会が行われる. 普段なかなか会う機会のない方々が一堂に会するのもこの懇親会の大きな魅力である. 実際, 私も昨年度知り合った友人たちとの再会を楽しみつつ, 新たな参加者と知り合うこともできた. 同世代の参加者たちとお互いの近況を語り合うことで士気も高め合うことのできるとても充実した時間である.

応用数学合同研究集会は数十年続く歴史ある研究集会である. 現在, 応用数学の分野で活躍する研究者の多くがこの研究集会での講演を経験し, さらに大切に作り上げてきたものであると思うと, ここで講演することの重要性を改めて感じる. 一方で, 毎年年末になると「そろそろ龍谷の季節だね」とこの研究集会を楽しみにしている先生方を見ると, 自分にとっても将来そのような存在になればいいなと思う. 来年度以降もますます応用数学合同研究集会は盛り上がっていくであろう. 私自身, 毎年少しでもいい発表をできるようこれからも研究に励み, この研究集会のいい伝統を引き継いでいけたらと思う. そのためにも, 来年度も無事に講演できるよう締め切りに余裕を持って申し込みを済ませるようにしたい.