学術会合報告

East Asia Section of SIAM (EASIAM) 2014 参加報告

2014年09月13日

榊原 航也,杉谷 宜紀

さかきばら こおや,すぎたに よしき

東京大学大学院 数理科学研究科

2014年6月23日から25日の3日間にわたってEASIAM 2014 が開催された.EASIAM は東アジアおよび東南アジアにおける工業および応用数学の為の国際会議であり,過去に香港,札幌,廈門,テジョン,ブルネイ,クアラルンプール,北九州,台北などで開催された.今回の開催地であるタイでは直前のクーデターにより開催が一時危ぶまれたものの幸いにも長期化することなく無事参加する事ができた.なお,参加者は150名の一方で事前キャンセルは42名となった.

EASIAM 2014 では,1件のplenary talk,4件のinvited talk,および3つの会場に分かれて,偏微分方程式,流体力学,数値解析などに関して様々な一般講演が行われた.我々は主に数値解析のセッションに参加していたのだが,その中でも1つピックアップしてみる.Edi Cahyono氏による “Some Solutions of Fisher Equation” では,Fisher 方程式のいくつかの解を具体的に構成してみせた.Fisher方程式は,半線型反応拡散方程式の最も簡単な例の1つと認識できるが,相転移やプラズマ物理,生態学など様々な分野に登場する重要な方程式である.この研究自体はまだ始まったばかりのようで,講演でも現段階までで分かっている事の中間報告のようになっていたが,今後,更なる発展を見せる事を予感させるものであった.そのためか,質疑応答の時間では,他の講演と比べてもより活発な議論がなされていたのが印象的であった.

我々の講演に関しては国際会議での講演は二人とも初めてであり,入念に事前準備をして臨んだつもりだったが,ネイティブの前で英語を話すのはやはり緊張した.さらに想定外のトラブルもいくつか発生し本番では何が起こるか分からないという大きな教訓となったが,大勢の専門家の前で英語講演を完遂できた事,内容に関心を持ってくれた研究者の方と質疑応答で議論できた事は,確実に我々の糧となった.

この EASIAM 2014 では,多くの催し物もあったことは記述すべき事であろう.まず,初日の夜には,かの有名な ”Alcazar Show” を見に行くツアーが催された.筆者の1人の榊原は初日で講演が終わっていたという事もあり参加したが,会場のスケールは想像以上に大きいものであった(実際のショーがどうだったか,ということはあえて書かないでおきたい).また,2日目の夜には Conference としてのBanquet が催され,タイの民族舞踊を始めとして,会場全体を巻き込んだイベントなどが行われた.なかでも特筆すべき事として,いきなりカラオケ大会が始まった事であろうか.選ばれた人の中には日本人もおり,Sukiyaki (song) を歌われたことは印象深い.やはり,Sukiyakiは万国共通なのであろう.このような陽気な雰囲気は東南アジアの風土がもたらすものなのかもしれない.また,最終日には,午後から Excursion が催され,タイの水上マーケット,ブッダの大きなペイントが施された岩がある “Khao Chi Chan”,そして最後に有名な寺院である “Wat Yansangwararam temple”を訪れた.水上マーケットは想像以上に広く,持ち時間の範囲で全体を回るのは大変困難であった.ブッダのペイントは大変に迫力のあるものであり,タイ国内での仏教に対する信仰心の高さを窺い知る事が出来るものである.最後に寺院を案内していただいている時に,このシーズン特有のスコールに見舞われた.しばらく待っても止まないので全員が車に駆け足で乗り込んだが,そのままホテルに送り届けられ,Excursion は終了となった.

2015年のEASIAMは,ICIAM 2015が8月に北京で行われるために開催されず(その機能の一部は北京で開かれるICIAM2015で行われる),次は2016年にマカオで行われる事になっている.
本国際会議は,東アジアにおける解析および数値解析の研究者の格好の交流場所であるとも言える.今回は冒頭に述べた通りクーデターの影響のためか若干参加者は少なかったが,次回以降,更に多くの参加者の下に,より活発な国際会議となることを望む.