学術会合報告

SIAM Conference on Analysis of Partial Differential Equations 参加報告

2014年07月20日

佐々木 多希子

ささき たきこ

東京大学大学院 数理科学研究科

2013年12月7日から10日まで,オーランド(アメリカ合衆国)にて,SIAM Conference on Analysis of Partial Differential Equationsが開催された.この研究集会は,偏微分方程式全般を対象とする研究集会であり,隔年で開催されている.本会議はオーランド国際空港から車で20分程のところにあるHilton Orlando Lake Buena Vistaで開催された.

オーランドはアメリカ合衆国フロリダ州中央部に位置し,全米屈指の観光・保養都市として知られる.ウォルト・ディズニー・ワールド・リゾートでも有名なこの街は,豪華なリゾートホテルが並び,景観も美しい.会場であるホテルの隣はダウンタウンディズニーという無料で,ディズニーに関連するショップやレストラン,エンターテイメントを楽しめるエリアがある.レストランの料理も非常においしく,営業時間も夜遅くまでやっているので,学会が終わったあとは毎日ダウンタウンディズニーで楽しむことができた.

大規模な国際会議に参加するのは初めてだったが,その規模の大きさに驚いた.8件の基調講演,88件のミニシンポジウム,14件の一般講演があった.しかし,多くの参加者がいたにも関わらず,日本人の参加は少ないように思われた.

今回は講演者の欠席が非常に目立った.というのも,会議が開催されていた時期,アメリカでは,天候の関係で飛行機に欠航や遅延が多く,会場にたどり着けなかった講演者が多かったそうだ.それを思えば,無事に到着し,様々な貴重な講演を聞けたのはありがたいことだろう.

今回の講演で特に印象的だったのは,Schrödinger方程式の教科書でも有名な,カナダのToronto大学のCatherine Sulem氏の講演だ.海洋の温度や塩分の変化により生じる内部波をオイラー方程式で記述し,その解の漸近挙動を調べるというものだった.内部波は海洋力学の観点からの重要な課題であるが,今までその詳細について聞いたことはなかったので興味深かった.また,これ以外にも,放物型,双曲型,分散型の方程式について,それぞれ数学的な解析だけではなく,応用よりの研究についても,たくさんのセッションがあった.特に,筆者の研究分野(双曲型および分散型の偏微分方程式の数値解析)と関連のあるセッションもあった.特に双曲型の方程式の高精度数値解法に関する講演,ハニカム構造上における波に関する講演は興味深かった.

また,日本に比べて女性の研究者が多い点も印象的だった.若い女性研究者も多かったし,ほとんど女性しかいないセッションもあった.筆者も同じ女性としてたくさんの刺激を受けたし,日本の女子学生に科学の魅力を伝えていきたいと思った.

偏微分方程式の数学的な解析と,数値解析など応用の講演も聞くことができ,お互いに討論しあえるこの会議は面白いし,重要な会議であると感じた.次回の会議も楽しみである.