学術会合報告
2013 NLA-HPC
2014年05月10日
宮田 考史
みやた たかふみ
名古屋大学大学院工学研究科
2013 年 12 月 9 日から 12 日までの 4 日間,台湾の国立清華大学にて,数値線形代数とハイパフォーマンスコンピューティングに関する国際会議(2013 NCTS Workshop on Numerical Linear Algebra and High Performance Computing)が開催された.中部国際空港から台湾の桃園国際空港までは約 3.5 時間であり,更に空港から会場の国立清華大学までは車で 1 時間程度で到着できたため,大変アクセスが良かった.会議は,招待講演のみのシングルセッションで行われ,一人一人の講演をゆっくりと聞くことができた.
会議のトピックは,線形計算の数理,ハイパフォーマンスコンピューティングの技術を活かした数値解法や,特定の応用問題に対する効率的な解法であった.発表 30 件のうち,固有値に関連した話題が 12 件であり,特に実際問題に現れる非線形固有値問題の話題が多かった.電子状態計算に現れる悪条件問題を解くためのハイブリッド型解法や,量子ドットの応用問題に対して反復法の収束を速める工夫(物理的な考察に基づき初期部分空間を生成)が印象的だった.重要な応用問題に特化した専用解法の研究は盛んに行われているが,各々の問題に精通する必要があり,アルゴリズム以外の知識も重要であることを痛感した.他にも,行列方程式の解法や行列関数の計算,通信量の少ないアルゴリズム開発,制約付き最小自乗問題の解法と画像処理への応用や,マルチシフト QZ 法の実装上の注意点など,興味深い講演が多かった.
会議は終始アットホームな雰囲気であった.ほとんどの発表が,発表の途中で質問を受ける(質疑の時間まで質問が待たされない)ため,質問者と発表者がすぐにお互いの意見を交換していた.また,質問に対して,発表者以外の参加者が質問に答える場面も見受けられ,会場全体が一つ一つの発表を丁寧に扱っている印象を受けた.特に,Kagstrom 教授が一人一人の発表に対してメモを書き留めた上で質問されていた姿が強く印象に残った.セッション間の休憩時間を利用することによって,込み入った質問をすることもできたため,充実した時間を過ごすことができた.
台湾料理は,ほんのりとあまく,優しい味の料理が多かったため,辛いものが苦手な著者は大変おいしく感じた.前述の通り,充実した会議の内容と併せて,楽しいひとときを過ごすことができた.この場を借りて,主催者の先生にお礼を申し上げます.特に Zhaojun Bai 教授,Chern-Shuh Wang 教授,Weichung Wang 教授は,著者も含めた日本からの参加者に対してお気遣い頂き,感謝いたします.