学術会合報告
SWoPP北九州2013 参加報告
2013年09月24日
廣田 悠輔,深谷 猛
ひろた ゆうすけ,ふかや たけし
理化学研究所 計算科学研究機構,神戸大学 大学院システム情報学研究科
2013年 7月31日から8月2日にかけて、北九州国際会議場 で2013年並列/分散/協調処理に関する『北九州』サマー・ワークショップ(SWoPP北九州2013)が開催された。今回で26回目となる本ワークショップは、「並列/分散/協調」というテーマのもとに各研究会が同時連続開催されるという形式となっており、本学会からは「行列・固有値の解法とその応用」研究部会が参加し(2008年より)、電子情報通信学会や情報処理学会の研究会(詳細は会議HPを参照)とともに研究会を行った。今年のSWoPPでは、期間中に137件の発表(最大4並列で49セッション)と2件のBOFがあり、参加者は322名にのぼった 。会場は小倉駅から徒歩数分という交通至便な立地 であったが、弓道の高校総体と日程が重なったために周辺の宿を確保することが困難となった。
本学会「行列・固有値問題の解法とその応用」研究部会のセッションは2日目に開催された。 合計3セッション9件の発表があり、連立一次方程式および固有値問題の解法に関する話題を中心に様々な観点からの取り組みが発表され、活発な議論が繰り広げられた。最初のセッションでは、連立一次方程式および標準固有値問題の反復数値解法の並列計算に関する3件の興味深い発表がなされた。第2セッションでは一般化固有値問題の解法が扱われ3件の発表があり、著者(廣田)もここで発表させていただいた。昼食後の第3セッションでは、高精度行列積アルゴリズムの高速化、周回積分を用いる固有値解法、固有値解析エンジンの実装という幅広いトピックが扱われた。高性能計算の専門化が多く集うSWoPPでの開催であるためか、第1、第3セッションを中心に並列計算・高性能計算に関連する話題が多い印象であった。また、著者(廣田)は発表後に分野外の研究者から発表に関する質問を頂く機会があり、その点でも分野横断的な本会議の性格を認識させられた。
一方、著者(深谷)が発表させていただいた、HPC研究会のセッションは初日の最初から最終日の最後まで全期間を通して行われた(15セッションで45件の発表)。発表内容は超並列計算の事例や性能評価からファイルシステムや省電力などと多岐に渡っていたが、スーパーコンピュータ「京」、次世代計算機、そしてGPUやXeon Phiといったメニーコア・コンピューティングに関する発表が多かった。これらの発表では、新しいアイディアだけでなく、利用ノウハウ(特に失敗談)を紹介する発表者も多く、同じ分野の研究者間で知識を積極的に共有し、HPCの分野全体として前に進もうとする雰囲気を感じることができた。
これら以外にも様々な研究発表が行われたが、詳細はプログラムに委ねる。また、2日目の夜に全体での懇親会が行われ、約200名の参加者が交流を深めた。近年のSWoPPは様々な分野から非常に多数の研究者が参加し、多くの研究発表がなされる。そのため、著者(廣田)のように普段とは異なる分野の研究者と議論することができたり、異なる分野の発表を気軽に聴きに行けたりすることができる大変良い機会となっている 。
最後になるが、SWoPPでは会場の準備から片付けまでは各研究会の担当者の方々によるところが非常に大きいので、この場をお借りして丸山実行委員長(理研)をはじめとする実行委員の皆様にお礼を申し上げたい。来年の SWoPPは新潟で開催予定ということである。本学会からも多くの研究者が参加し、活発な議論と交流がなされることを期待したい。