学術会合報告
EASIAM 2013 参加報告
2013年09月24日
宮武 勇登
みやたけ ゆうと
東京大学 情報理工学系研究科
2013年6月18日から20日まで,インドネシア・西ジャワ州の州都バンドンにてEASIAM2013(The 9th East Asia SIAM Conference)が開催された.EASIAMは応用数学,応用数理全般を対象とする国際会議であり,毎年東アジアの各都市で開催されている.台湾で開催された昨年に続き第9回目の今年も,東アジアを中心に100名以上の研究者や学生が参加した.
ジャワ島のパリと呼ばれるバンドンは首都ジャカルタから約200km離れた内陸の都市であり,標高が高いため一年を通して涼しく過ごしやすい街である.実際,会議の期間中も一日の平均気温は20度前後であり,赤道付近にも関わらず同時期の日本と比べても非常に快適な環境であった.また多くの大学が集まる学術都市でもある.
日本からバンドンへの直行便はなく,一旦シンガポール等を経由することになる(しかし中にはジャカルタから電車やバスを利用した日本人参加者もいたようである).著者はまずバンドンに到着後,バンドン=フセイン・サストラネガラ空港に大きな衝撃を受けた.なんと飛行機からターミナルまでは徒歩移動であり,乗客が歩いている間も,隣の滑走路では平然と離発着が行われていた. しかし,一旦街に入ると前述のとおり非常に快適に過ごすことができた.食事もとても美味しかったが,水事情に注意しすぎるあまり挑戦できなかった伝統料理もあり,少し残念である.
会議は3日間を通して,5件の招待講演,3件の学生論文賞講演,100件以上の一般講演で構成されていた.招待講演では講演者に似顔絵が贈られるというサプライズがあった.学生論文賞で1st prizeを受賞したX. Cai氏は,画像処理の分野で知られているMumford-Shahモデルに関連して新手法を提案し,さらに数学的な解析も行っていた.参加者の中に画像処理の専門家は少数だったと思われるが,そのような中動画を多く用いるなど内容を分かりやすく伝える工夫が随所になされており,講演の仕方として参考になる点も多かった.一般講演はセッションごとに12テーマが設定されており,微分方程式や数値解析,統計といった理論よりのセッションから,数理生物学やライフサイエンス,ファイナンスといった応用よりのセッションまで多岐にわたっていた.これらのテーマからも応用数理の幅広い分野の研究者が集まった様子が伺える.一方で,著者の研究内容(微分方程式の数値解析)と関連のある講演も少なくなく(例えば非線形波動や浅水波方程式の数値計算に関して数件の講演があった),それらの講演は特に興味深かった.また,著者は今年が初めての参加だったが,これまでに参加した他の国際会議と比べて学生の参加が多いように感じた.研究者を目指す同年代の人達には大きな刺激を受けた.
次回のEASIAMはタイのバンコクで来年開催される.次回の会議も非常に楽しみである.