学術会合報告
ICCAM2012
2012年12月18日
相原 研輔,赤岩 香苗
あいはら けんすけ,あかいわ かなえ
東京理科大学大学院 理学研究科 数理情報科学専攻,京都大学大学院 情報学研究科 数理工学専攻 応用数学講座 数理解析分野
2012年7月9~13日,ベルギー・オースト=フランデレン州の州都Ghent(英語でゲント,フラマン語でGent [ヘント],フランス語でGand [ガン] と呼ばれる)にあるGhent大学にて,ICCAM (International Congress on Computational and Applied Mathematics)2012が開催された.
計100名以上の参加者は,やはりヨーロッパ諸国からの参加が多かった.日本からは9名が参加し,ヨーロッパを拠点とするアジア人参加者も数名いた.会場はGent Sint-Pieters駅から徒歩30分程であり,海外からの参加者は駅周辺ホテルへの宿泊が多かったようである.会議期間中は,雨が降ったり止んだり,突然陽が差したりという,ヨーロッパらしい天候であった.
7件の招待講演がシングルセッションで,88件(キャンセル1件)の一般講演が3部屋のパラレルセッションで行われた.ポスターセッションは無く,日本人は全員が一般講演を行った.本会議の焦点は,特定の分野に絞られておらず,講演内容として,非線形方程式,数値線形代数,ODE,PDE,補間,最適化問題,積分方程式,並列計算,数値解析ソフトウェアなど,多岐に渡っている.著者(相原)は,数値線形代数やPDEに関連する講演を聴講していたが,応用問題を扱う講演の中では,Multigrid法の話題が多かった印象がある.著者(赤岩)は,離散戸田方程式を応用した複素非対称行列の三重対角化に関する講演を行ったが,同じセッションでは,ページランク計算やある常微分方程式に対するウェーブレット法など多様なテーマが取り上げられていた.また,信号処理に関する講演は,問題設定から近似行列の説明まで板書で行われ,印象的であった.セッションの合間にコーヒーブレイクが30分あり,参加者同士で意見交換を行うこともできた.特に,ヨーロッパ諸国の学生と,各国の学位取得の過程や大学制度について話し合った際は,その違いに驚くことが多く興味深かった.
昼食は,会場近くのレストランで使える1日10ユーロ分のチケットが用意されており,フラマン語で書かれたメニューに戸惑いつつも,指を差して注文する参加者の様子が見られた.セッションは17:30には終了し,夜は市内を散策しつつ,食事やベルギービールなどをゆっくり楽しむことができた.
会議全体の印象として,Social programがとても充実していた.初日は,科学史博物館にてWelcome receptionが開かれ,ワインを片手に歴史に残る発明品等を鑑賞した.2日目に,Ghentの市内観光,3日目にBrugesへのエクスカーションが企画され,いずれも小グループに分かれてのガイド付き観光ツアーであった.Brugesでは,世界遺産であるベギン会院,救世主大聖堂,鐘楼などを見学し,ヨーロッパならではの石畳に煉瓦造りの色彩や風景を満喫できた.4日目に,Ghent大学が所有する元修道院Het Pandという趣のある施設にて,Conference dinnerが催された.参加者が自国の歌を合唱するイベントも行われ,出席した日本人で「ふるさと」を披露するなど,賑やかな会食となった.
本会議は隔年で開催されており,プロシーディングスとしてJournal of Computational and Applied Mathematics の特集号が刊行されている.会議のホームページ(http://www.iccam.ugent.be/)に講演の予稿集が掲載されているので,内容に興味を持たれた方は,プロシーディングスをぜひご参照頂きたい.