学術会合報告

The seventh International Conference on Continuous Optimization (ICCOPT2022) 参加報告

2023年03月03日

伊藤 勝

いとう まさる

日本大学

2022年7月23日から28日にかけて、国際会議「The seventh International Conference on Continuous Optimization」(ICCOPT2022) がアメリカ合衆国ペンシルベニア州ベツレヘムのリーハイ大学で開催されました。ICCOPTは、数理最適化における連続最適化の分野で3年に一度開催される国際会議であり、今回はリーハイ大学で毎年開催されている 「Modeling and Optimization: Theory and Applications」 (MOPTA) との共催となりました。本国際会議では、新型コロナウイルス感染症の対策のもと、対面のみでの開催となり、私にとっては約2年ぶりに対面の国際会議の会場に足を運ぶことができて嬉しく思います。約30の国から600名ほどの参加があり、多くの参加者にとって久々の対面開催の学会として活気づいていました。新型コロナウイルス感染症の制限により、参加をキャンセルした方も多くいたようです。日本も例外ではなく、今回の日本からの参加者は数名だったと思います。特にこの時期は日本の渡航制限が厳重で、日本の出入国72時間以内の陰性証明が必要であったこともあり、無事に日本に帰れるかハラハラしながらの渡航でした。

リーハイ大学の講演会場
リーハイ大学の講演会場

ICCOPT では前半の2日間にサマースクールが企画されることが恒例となっています。今回も7月23、24日にサマースクールが開催されました。私は残念ながら参加できませんでしたが、1日目に分布的ロバスト最適化、2日目にプログラミング言語 Julia の最適化モデリングライブラリである JuMP に関して集中講義が行われていました。

ICCOPT のカンファレンスは25日から行われました。今回の ICCOPT では、4件の plenary talk と6件のsemi-plenary talk があり、延べ200近いパラレルセッションが構成されました。semi-plenary の1人には東京大学の武田朗子先生が招待されました。武田先生は機械学習のいくつかの問題における二段階最適化(bilevel optimization)に関して大変わかりやすく講演され、勉強になりました。武田先生と親しい Guanghui Lan 先生(Georgia Institute of Technology)もこの国際会議で semi-plenary に招待されていて、コーヒーブレイクの時間に Lan 先生が武田先生に「Congratulation」と声をかけていたのが印象的でした。

プログラムの編成は、新型コロナウイルス感染症の影響で、公開直前まで慌ただしかったのではないかと推察します。特に、私はもともと割り当て予定だった contributed セッションから別の organized セッションに移動となったのですが、移動先のセッションでは私以外の発表者が皆キャンセルとなったので、私はひとりでセッションを担当することになるという、興味深い体験をしました。発表自体は、聴衆との研究交流も生まれたので、非常に有意義なものとなりました。

個人的に面白いと思った講演はいくつもありますが、特にこの分野の著名な研究者である Yurii Nesterov 先生(Université catholique de Louvain)の発表が興味深いものでした。彼の講演はいつも多くの聴衆が集まる印象があります。今回はセミナー室がそれほど大きくなかったので、人が入りきらないほどでした。彼の発表は、意外にも約20〜30年前に盛んに研究され理論が確立された内点法という凸最適化手法についてでした。内点法の理論では self-concordant barrier という関数が基礎になっていますが、これを一般化した関数のクラス(set-limited 関数という)を導入して、より汎用的な内点法の方法論を提案されていました。この概念によって内点法の可能性がどれほど広がるのか気になるところですが、内点法の基礎理論でこのような本質的な進展ができることは面白いと感じました。

今回、久々に対面開催の国際会議に参加し、活気ある研究交流の場で研究の熱を直に感じることができて、研究の志気が押し上げられました。今後のポストコロナ時代には、日本を含め研究集会の対面開催(と懇親会)が制限されないときが早く訪れることを願っています。