学術会合報告

第20回男女共同参画学協会連絡会シンポジウム参加報告

2023年04月27日

森山 園子

もりやま そのこ

日本大学

2022年10月8日の10時から17時にかけて,東京大学武田先端知ビル武田ホールにおいて第20回男女共同参画学協会連絡会シンポジウムが開催(Zoom webinar同時開催)されました。本シンポジウムは,一般社団法人男女共同参画学協会連絡会(以下,学協会連絡会)の主催により毎年実施されており,今回が20回目のシンポジウムでした。学協会連絡会とは,STEM分野における日本の女性研究者比率が諸外国と比べて著しく低い現状を改善すべく2002年に発足した団体です。ちなみに,日本応用数理学会は2014年から学協会連絡会に正式加盟しています。学協会連絡会が主催するシンポジウムでは,世の中の情勢を反映したテーマが毎回設定されます。今回のシンポジウムのテーマは,女性版骨太の方針2021にクオータ制の適用が明記されたことを踏まえ,「男女間の積極的格差改善措置(女性限定公募・クオータ制など)について~より公平な社会の実現を目指して~」となりました。

シンポジウムは午前の部,昼の部,午後の部の3部構成でした。学協会連絡会では毎年1つの学協会が幹事学会となって運営を行っています。第20期(2021年11月~2022年10月)の幹事学会は日本生物物理学会です。シンポジウムについて簡単に紹介します。

午前の部は,第20期委員長である原田慶恵先生の開会挨拶と小池百合子都知事の祝辞に始まり,3つの講演が行われました。学協会連絡会では,2003年から概ね5年ごとに科学技術系専門職の男女共同参画実態調査(以下,大規模アンケート)を実施しています。学協会連絡会の提言・要望書ワーキンググループが大規模アンケートの結果に基づく提言・要望書を作成することで,5年ごとに改定される科学技術基本計画や男女共同参画基本計画に反映させることを目指しています。3つの講演では第20期が実施した5回目の同実態調査の結果とその解析が報告され,女性研究者登用をイノベーション創出の切り札とするために,女性研究者の雇用体制・研究費等の申請における年齢制限の大幅な緩和および任期付き職の定着促進,大学・高等教育機関等における女性研究者割合,特に執行部・上位層の戦略的な増加策,大学等における女性研究者の旧姓使用に関する現状調査実施という3点の要望が述べられました。

昼の部では男女参画の取り組みに関するポスターセッションが行われ,加盟学会から32件の発表がありました。続いて,午後の部は第20期幹事学会の日本生物物理学会会長の挨拶,ご来賓の挨拶に続き,基調講演とパネル討論が実施されました。基調講演では,本シンポジウムのテーマである「男女間の積極的格差改善措置(女性限定公募・クオータ制など)について考える~より公平な社会の実現を目指して~」について4つの講演が行われました。1件目は,弁護士会における男女共同参画推進特別措置の導入についてでした。様々な形の異議と直面しつつクオータ制導入を成し遂げ,第二東京弁護士会では2014年以降に毎年2名の女性副会長を選出するに至り,現在は女性の専任が自然な在り方になったそうです。2件目は,候補者均等法に関連した政治の世界における男女共同参画の取り組みについてでした。クオータ制を成功に導くためには,多様性のある意思決定によりポジティブな変化が生じることを示すことで反対派を説得し,全体の納得感を醸成することがポイントであるというお話が印象的でした。3件目は,東北大学工学研究科のDEI推進プロジェクトについてでした。2022年4月の女性教授5名の公募実施に際し,執行部および教授会構成委員の意識改革に努力を重ねたうえ,新たなポストを用意することで周囲の理解を得るに至ったそうです。4件目はNPO法人Waffleの活動および格差改善のためにすべきことについてでした。日本における女子高生の数学・科学の学力は国際的に高い一方で,大学の工学部女性比率は117か国中109位の14%と低い状況にあります。更なる科学技術の発展のためにはこの理工系女子後進国という現状打開が急務であるというお話がありました。最後のパネル討論では,基調講演の4講演者をパネリストとして,基調講演に基づいた活発な議論が行われました。

日本応用数理学会は学協会連絡会の第22期幹事学会を2023年11月から1年間にわたり務め,幹事学会としての任期最後である2024年10月には第22回シンポジウムを主催します。本学会は2014年から男女共同参画担当理事を設け,2016年から年会・連合発表会でランチミーティングを企画するなど,はやくからダイバーシティに配慮した活動をして参りました。本学会のこの経験を生かして,多様性について改めて考える1年としたいものです。学会の皆様のご協力を宜しくお願い致します。