学術会合報告

日本応用数理学会若手の会 第8回学生研究発表会(@岡山理科大学)

2023年06月29日

友枝 明保

ともえだ あきやす

関西大学総合情報学部

2023年3月11日,日本応用数理学会「若手の会」研究部会主催の「第8回学生研究発表会」が岡山理科大学で開催されました.これは,3月8日から10日にかけて開催された第19回研究部会連合発表会に合わせて企画された若手の会のイベントの一つで,久しぶりに対面での発表会となりました.以下では,若手の会研究部会の主査の目線も交えつつ,学生研究発表会についてご報告させていただきます.

まず,若手の会研究部会およびこの学生研究発表会の開催趣旨について,簡単にご説明いたします.若手の会研究部会は,40歳ぐらいまでの正会員および学生会員が中心となり,研究集会やイベントを行うことで,若手会員の研究発表機会の創出および学会活動の活性化,研究部会を横断した若手会員間の交流を目的として活動しています.その代表的なイベントが今回ご報告させていただく「学生研究発表会」です.この学生研究発表会では,年会や連合発表会で発表するような内容にはなっていないが研究を進めるにあたって多くの人の意見をもらいたい,近い将来にしっかりした発表ができるように研究発表に慣れ親しむ場が欲しい,他大学の同世代がどのような研究をしているのかを知りたいといった多くのご要望を受け,そのご期待に応えるべく2015年度より開催しております.

今回の学生研究発表会ですが,久しぶりに対面での開催だったためか,講演数30件(参加者62名)と,コロナ前と比べると大変多くの方々にご講演(ご参加)いただくことができました.講演の内訳は,学部生13件,大学院生(修士)14件(うちM1学生12件),大学院生(博士)3件(全員D1学生)となっており,本発表会がその役割を遂行できていることを嬉しく思うとともに,この発表会からステップアップして,進展した研究成果を年会や連合発表会で発表してくれることを期待します.

発表会のオープニングでは,開催趣旨に加えて,質問を通じて積極的にコミュニケーションをとり,お互い研究のヒントやアイデアを交換できるチャンスをたくさん作ってほしいというメッセージを共有させていただきました.その後,担当幹事の高安亮紀先生にMCを務めてもらい,ショートプレゼンテーションが始まりました.ショートプレゼンテーションでは,研究成果までは見せずに質問を投げかけて終わるスタイルや,成果物を実際に見せてその仕組みに興味を持ってもらうスタイルなど,研究内容に興味を持ってもらうための工夫を凝らしたトークもありました.40分ほどで講演者全員のショートプレゼンテーションが終わり,その後,各自のポスター場所へと移動してもらい,2時間のポスターセッションが始まりました.数理ファイナンス,数値解法や精度保証,機械学習や強化学習,データ同化,位相的データ解析,錯視や生物ロボットといった現象数理モデリングなど,様々なテーマが聞けることもあり,ポスターセッションは会場全体で賑やかに進んでいきました.その中から一つ,社会的なブームを記述する数理モデルに関するご講演について,紹介させていただきます.これは,ブームの熱しやすさや,冷めやすさ,定着しやすさといったパラメーターが組み込まれた既存の数理モデル研究をふまえて,出生率や死亡率という新しいパラメーターを導入し,ブーム前後での消費者の状態の遷移を微分方程式系で記述したものでした.モデルとしては素朴なものでしたが,その数理解析から定性的な結論を導出するプロセスについて,丁寧に解説していただきました.このご講演を紹介させていただいた理由はもう一つあり,それは,ipadを用いてスムーズな議論をさせてもらった点です.ポスターの内容に関する議論をしている流れで,関連論文の内容について質問したところ,講演者が手持ちのipadでさっと論文の中身を見せてくれて,しかもその場で書きこみながら説明をしていただきました.かなり使い慣れておられるご様子で,メールアドレスをお伝えすると,その場で資料も送っていただくことができました.私自身もポスター発表で実験やシミュレーション動画を見せるためにタブレットを利用することはあるのですが,そういった利用だけでなく,流行りのChatGPTなど,便利なアプリケーションをうまく使いこなすことができれば,一段レベルの高いポスター講演ができる可能性に改めて気づかされました.ポスターセッションは,お茶菓子が余るほど,皆さんが熱中して議論しておられ,あっという間に2時間が過ぎ,次期主査の榊原航也先生から,次年度も開催する予定であることがアナウンスされクロージングとなりました.このように盛会となりましたのは,ひとえにご講演・ご参加いただきました皆様のご協力のおかげであり,次年度以降も継続的にご参加いただけることを願っております.

最後になりますが,本発表会を開催するにあたって,若手の会のメンバーでもあり部会連合発表会の実行委員の榊原航也先生,若手の会の学生研究発表会を担当してくださいました高安亮紀先生,田中吉太郎先生,宮武勇登先生,安田和弘先生には,発表形式の検討から会場手配,申し込みの取りまとめや物品購入の取りまとめなど,大変ご尽力いただきました.この場を借りて御礼申し上げます.

〇 若手の会HP:http://wakate.jsiam.org
〇 第8回学生研究発表会の詳細;http://wakate.jsiam.org/?p=128

ショートプレゼンテーションの様子
ショートプレゼンテーションの様子

ポスターセッションの様子
ポスターセッションの様子

集合写真
集合写真